MT4を利用した自動売買をするときに必須になるプログラムが「EA(エキスパート・アドバイザー)」です。では、この「EA」を販売サイトに行ってから、どうやって選べば良いのでしょうか?今回は優秀な「EA」の選び方について解説します。
優秀な「EA」の選び方
解説の前に今回はfx-onという「EA」販売サイトを例に「優秀なEAの選び方」を解説していきます。
fx-on
その1.プロフィットファクター(PF)をチェックする
プロフィットファクター(PF)とは
プロフィットファクター = 総利益 / 総損失
を示す指標のことです。
プロフィットファクターは、英語で表記すると「Profit Factor」ですので「PF」と表記されることが多いのです。
「プロフィットファクターは、利益の総額が損失の総額の何倍にあたるのか?」
を意味するので
プロフィットファクターが1.0以上 → 黒字(損失よりも利益の方が大きい「EA」)
プロフィットファクターが1.0未満 → 赤字(利益よりも損失の方が大きい「EA」)
と判断することができます。
表示例
計算例
EA1
総利益:120万円
総損失:60万円
損益:+60万円
プロフィットファクター = 120万円 / 60万円 = 2.0
EA2
総利益:800万円
総損失:500万円
損益:+300万円
プロフィットファクター = 800万円 / 500万円 = 1.6
EA3
総利益:300万円
総損失:400万円
損益:-100万円
プロフィットファクター = 300万円 / 400万円 = 0.75
となります。
この中で一番優秀な「EA」は、プロフィットファクターのみで判断すれば「EA1」となるのです。
実際の損益では「EA2」の方が大きいのですが、投資対効果が高いのはプロフィットファクターが2.0の「EA1」なのです。
海外FX業者を利用した自動売買では、証拠金やレバレッジはある程度自由に選択できます。
だとすれば、損益額が大きい「EA」よりも、投資対効果の高い「EA」を選んで、取引量を増やせば一番利益ができるのです。
プロフィットファクター(PF)をチェックする注意点
プロフィットファクター(PF)が高すぎる「EA」には注意が必要です。
- バックテストデータだけで判断したPF(過度の最適化が行われている可能性がある)
- 含み損のあるポジションを損切りせずに塩漬けにする設定
- トレード期間が圧倒的に短く、取引回数(データ)がそもそも少ない
という場合は、異常に高いプロフィットファクター(PF)が出てしまいます。
優秀な「EA」プロフィットファクター(PF)の目安は「1.5~2.5」です。
その2.最大ドローダウンをチェックする
最大ドローダウンとは
特定の期間中に累積損益が一番落ち込んだときの割合のこと
を言います。
計算例
100万円を1年間で180万円に増やしてくれた「EA」の最大ドローダウンは?
期間 | 累積損益 |
---|---|
1か月目 | 100万円 |
2か月目 | 150万円 |
3か月目 | 200万円 |
4か月目 | 180万円 |
5か月目 | 150万円 |
6か月目 | 120万円 |
7か月目 | 150万円 |
8か月目 | 160万円 |
9か月目 | 120万円 |
10か月目 | 200万円 |
11か月目 | 210万円 |
12か月目 | 180万円 |
累積損益が一番高いのが210万円で一番低いのが100万円だから・・・
( 210万円 - 100万円 ) / 210万円 = 52%
→ 「×」間違えです。
じゃあ、はじめの100万円は抜かして、累積損益が一番高いのが210万円で一番低いのが120万円だから・・・
( 210万円 - 120万円 ) / 210万円 = 42%
→ 「×」間違えです。
3か月目の200万円から落ち込みが続いて6カ月目に120万円まで落ちているから・・・
( 200万円 - 120万円 ) / 200万円 = 40%
→ 「○」正解です。
折れ線グラフで言えば、右下に線が引かれたときにその落ち込みが一番高いところを選択して、落ち込み率を出したものが「最大ドローダウン」なのです。
「最大ドローダウン」が示すものは
この「EA」を使うと、最大で資産が○%は落ちる可能性があるよ。実際に過去は最大でこのぐらい資産が目減りしたよ。
というものです。
最大ドローダウンが大きい「EA」 = 資産が減るリスクが大きい「EA」
最大ドローダウンが小さい「EA」= 資産が減るリスクが小さい「EA」
ですから、優秀な「EA」を選ぶときは、最大ドローダウンの小さい「EA」を選ぶ必要があります。
優秀な「EA」の最大ドローダウンの目安は「10%以下」です。
最大ドローダウンをチェックする注意点
これも小さすぎると、バックテストのデータを元に数字を合わせた「カーブフィッティング(最適化)」の疑いがあります。
最大ドローダウンは「フォワードテスト」のデータであること
が重要なポイントになります。
その3.「フォワードテスト」+「含み損」をチェックする
フォワードテストとは
実際に運用した結果で検証した「EA」の運用成績のデータのこと
バックテストとは
過去のチャートデータで「もし、このEAを動かしたら、損益はどうなっていたのか?」をシミュレーションしたデータのこと
バックテストの注意点
バックテストは、MT4の機能で簡単に検証することが可能です。
つまり、
- EAを開発した → バックテストのデータが悪かった。
- EAを修正する → バックテストのデータが良くなった。
- EAをさらに修正する → バックテストのデータがさらに良くなった。
・・・
と、繰り返してEAを最適化することができてしまうのです。
これは「後出しじゃんけん」のようなもので・・・
バックテストのデータだけが良くなることを意図して作られた「EA」ができてしまうのです。
そのため
「EA」を見極めるときに「バックテストのデータ」は全くあてにならない
→ 「フォワードテスト」のデータを見るべき
と考える必要があります。
有料の「EA」を販売しているサイトなどは、「フォワードテスト」のデータを公開しています。
有料であることの理由があるのです。無料EAの掲示板などは「バックテスト」のデータしかないことの方が多いのです。
「フォワードテスト」に「含み損」を加えたデータが最も信頼性が高い
「フォワードテスト」であれば、完璧と考える方もいるかもしれませんが、「フォワードテスト」にも問題があります。
「フォワードテスト」は累積損益をプロットしたグラフです。
もし、仮に「利益が出ていないポジションは損切せずに保有し続ける」という「EA」があった場合には
実際は「含み損」が多く発生しているのに、エグジットするのは「利確できるものだけ」なので、「フォワードテスト」のデータが右肩上がりのグラフになる
という現象が発生してしまいます。
これで正確にその「EA」の実力を評価できないので、fx-onなどでは
「フォワードテスト」+「含み損」
のデータでグラフを公開しているのです。
優秀な「EA」は、「フォワードテスト」+「含み損」のグラフが右肩上がりになっているものです。
その4.「稼働期間」と「取引回数」をチェックする
- 「プロフィットファクター(PF)」
- 「最大ドローダウン」
- 「フォワードテスト」+「含み損」
という、これまでの3つは、「EA」の性能を判断する指標でした。
今回解説する
「稼働期間」と「取引回数」は
上記の「EA」の性能を判断する指標の信頼性を判断するものです。
稼働期間とは
EAがどのくらいの期間、フォワードテストで稼働しているのか?
取引回数とは
EAが何回、フォワードテストでトレードをしたか?
を表します。
- 「プロフィットファクター(PF)」:2.4
- 「最大ドローダウン」:5%
- 「フォワードテスト」+「含み損」:右肩上がりのグラフ
という「EA」があっても、
- 稼働期間が1カ月
- 取引回数が10回
であれば、検証データが少ない状態での性能が良いデータですので、「信頼性に乏しい≒たまたま良い結果が出たEA」という可能性が高いのです。
十分な検証期間は
「稼働期間」:6カ月以上
「取引回数」:100回以上
と考えましょう。
これをクリアした上で、「EA」の性能を判断する指標が良い数字であれば、優秀な「EA」の可能性が高いのです。
fx-onの場合は、フォワードテストの1回ごとの取引情報を公開していて、「csvファイル」でのダウンロードも可能ですので、ここで「稼働期間」「取引回数」はチェックできます。
その5.「ストップロス」の設定をチェックする
ストップロス注文とは
自分の予想に反して為替レートが動いた場合に備えて、損失を限定するために行う損切注文のこと
を言います。
裁量トレードをしている方であれば、多くの方が「ストップロス注文」を設定しているはずです。
「EA」にも、「ストップロス注文」があり、
優秀な「EA」は、「ストップロス注文」を小さく設定しています。
「ストップロス注文」がない、「ストップロス注文」が大きすぎると・・・
- 含み損を抱えたポジションが多くなってしまう
- 含み損を抱えた保有ポジションが増えれば、「フォワードテスト」の結果は良く見えてしまう
- 保有するポジションの最大値が決まっている場合、塩漬けポジションのせいで、新規注文が行われなくなってしまう
- 決済したときに急激に損益がマイナスに動いてしまう
という問題を抱えてしまいます。
fx-onでは、ストップロス注文を確認できるので、チェックしてから「EA」を選びましょう。
優秀な「EA」のストップロス注文の目安は「10pips~100pips」です。
「EA」の採用しているトレード手法によって、最適なストップロス注文の幅は変わってしまうので、スタイルを見ながら、適正なストップロス注文の設定であるかを確認する必要があります。ストップロス注文が設定されていない「EA」は論外です。
その6.直近3カ月のデータをチェックする
MT4ではありませんが、同じ自動売買のトレードプラットフォームである「ミラートレーダー」検証結果では
FX自動売買の相関係数
収益 | 未来1ヶ月 | 未来3ヶ月 | 未来6か月 |
---|---|---|---|
過去1ヶ月 | -0.29 | -0.16 | -0.34 |
過去3ヶ月 | 0.16 | 0.38 | 0.05 |
過去6か月 | 0.11 | 0.28 | -0.02 |
過去12ヶ月 | 0.18 | 0.33 | 0.13 |
相関係数というのは「-1」~「+1」の範囲内になり
プラス → 正の相関
0 → 相関関係がない
マイナス → 負の相関
という意味を持ちます。
という結果が出ています。
未来3カ月の収益に一番相関関係が高いと認められたのは「過去3カ月」のデータなのです。
つまり、
優秀な「EA」を比較検討するときはの「過去3カ月」のデータを採用すべき
ということになります。
「未来6カ月」のデータと相関関係が高いのは「過去12カ月」ですので、こちらも次点として、頭に入れておきましょう。
その7.「EA」の収益曲線の形をチェックする
「EA」の収益曲線は色々な形があります。
ノコギリ型
変動をしながら、安定して収益が伸びている
階段型
取引回数が少ないことが原因で、階段のようにガタガタした曲線になる
おわん型
はじめは安定した収益が伸びたが、EAの寿命が尽き、マイナス方向に動いている
急降下急上昇型
急上昇や急下降を行い、変動が激しい
急上昇型
急激に損益が伸びている
優秀な「EA」は、ノコギリ型です。
「ノコギリ型」は
- ギザギザが多いほど、取引回数が多い(≒信頼性が高い)
- 右肩上がりに直線的に上昇しているほど、安定した勝率がある
と、判断できます。
ただし、ノコギリ型の「EA」も、寿命が尽きて「おわん型」になったり、急下降することもあります。
「EA」は買って設定して終わりではなく、継続的に収益曲線の形はチェックしなければならないのです。「EA」には寿命もあるものなのです。
まとめ
MT4自動売買で優秀な「EA」の選び方には
- その1.プロフィットファクター(PF)をチェックする
- その2.最大ドローダウンをチェックする
- その3.「フォワードテスト」+「含み損」をチェックする
- その4.「稼働期間」と「取引回数」をチェックする
- その5.「ストップロス」の設定をチェックする
- その6.直近3カ月のデータをチェックする
- その7.「EA」の収益曲線の形をチェックする
というものがあります。
このチェックポイントは、ベースとして「EA」を選ぶときに見ておく必要があるものです。
しかし、これらの情報が整備されているのは「有料EAサイト」のみです。
無料「EA」掲示板などは、バックテストのデータすらなく、自分でバックテストをしなければならないようなものが多いのです。
情報が揃っているという意味では、ある程度のコストをかけてEA販売サイトでの有料「EA」の購入をおすすめします。
また、「EA」による自動売買の経験値が増えてくれば、自分なりの判断基準ができてくるはずですので、まずは基礎的なチェックポイントを抑えることと、運用する「EA」の数を増やすことを心がけましょう。一つの「EA」に運用資金を集中するよりは、複数の「EA」に分散投資した方が、経験値の伸び率は高くなるのでおすすめです。