為替相場は、チャートだけを見れば良いものではなく、市場参加者である個人投資家、機関投資家の「ポジションの偏り」を読む必要があります。その理由とその解決策としての「シカゴIMM通貨先物ポジション推移で市場参加者のポジションの偏りを知りトレンドの転換点を読む方法」を解説します。
相場は市場参加者の保有するポジションに左右される
2016年12月28日現在の米ドル/円
米ドル/円相場は、117.529円という円安水準になっています。
理由は、ご存知の通りトランプ大統領の大幅な減税、インフラ投資に対して市場が好感を持って、ドル買いを進めているからです。
市場は、ドル高(円安)方向に強気であることは間違えありません。
「じゃあ、このまま円安がどんどん伸びていくのか?」
というとそうではないのです。
この後、相場がどうなるか?は執筆時点ではわかりませんが
- 市場参加者のお金は限りがある。
- 市場参加者の人数は限りがある。
- ドルの「買い」ポジションが少ない状態で市場が強気であれば上昇する可能性が高い
- ドルの「買い」ポジションが多すぎる状態で市場が強気であってもこれ以上上昇する余地はない
ということになるのです。
市場参加者のお財布、人数にはあくまでもある程度の上限があるため、ドルの「買い」ポジションが少ない状態で、市場参加者がドル高(円安)方向に強気の場合はどんどん「ドル買い」に参加する方が増えるのでドル高が伸びることになります。
しかし、みんながドルの「買い」ポジションを持っている状態だと、もうこれ以上買ってくれる市場参加者はいないのですから、レンジ相場に移行します。
さらに少しでも「ドル売り」がはじまったら
- 「やばいロスカットしなければ!」
- 「今まで伸びていた相場が終わった、ショートポジションを持とう!」
と怒涛の損切りが始まり、損切りループによって、相場は急速に転換してしまうのです。
当然、チャートの移動平均線などを見れば、トレンドの終焉を読み取ることは可能ですが、「市場参加者のポジションの偏り」を知ることができれば、もう一段深いレベルで相場の転換点を読み取ることができるのです。
「どうやって、市場参加者のポジションの偏りを知るの?」
シカゴIMM通貨先物ポジション推移が参考になります。
シカゴIMM通貨先物ポジション推移とは?
アメリカの先物取引所「CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)」では、通貨の先物取引も行っています。
全米先物取引委員会(CTFC)は、各取引所に先物商品のポジション動向を後悔することを義務付けているため、CMEは毎週火曜日の取引終了時点で建玉明細を報告しているのです。この建玉明細のことを「シカゴIMM通貨先物ポジション」と言います。
ヘッジファンドやCTAなどの投機筋のポジションがこの建玉明細でわかるので、個人投資家も含めて多くの投資家が「シカゴIMM通貨先物ポジション」を市場全体における投機筋が保有しているポジションの縮図として参考にしているのです。
シカゴの取引所だけのポジションのデータですが、それを参考にする投資家が多い為、市場全体を推しはかる材料として重宝されているのです。
シカゴIMM通貨先物ポジション
出典:セントラル短資FX
シカゴIMM通貨先物ポジションをどうやって見るのか?
円/米ドルで見ると「売り」ポジションがかなり伸びてきています。
つまり、米ドル/円で見ると「買い」ポジションの保有割合が伸びている状態です。
※シカゴIMM通貨先物ポジションはドルから見た日本円の「買い」「売り」ポジションですので、米ドル/円では反対になることを間違えないようにしましょう。
円安が急速に進んだので、ドルに対して日本円を売るポジションが増えるのは当然です。しかし、このチャートを見る限り、多くの機関投資家が「買い」ポジションをすでに持っていることになります。
ということは
少しでも「売り」に傾けば一気に円高方向に動く可能性が高いと考えられます。「これ以上は円安が進行する余地が残されていない」ということです。
つまり、米ドル/円で見ればそろそろ「売り」で仕込んでおく段階だということです。
シカゴIMM通貨先物ポジションの使い方
「買い」ポジションの偏りが大きい → 少しのきっかけでトレンドが「下降」に転じる可能性が高い
「売り」ポジションの偏りが大きい → 少しのきっかけでトレンドが「上昇」に転じる可能性が高い
「買い」ポジションの偏りが小さい → 上昇トレンドであればそのままトレンドが伸びる可能性が高い
「売り」ポジションの偏りが小さい → 下降トレンドであればそのままトレンドが伸びる可能性が高い
ということになるのです。
当然、これはシカゴの取引所だけのデータであることや、相場観とは関係ない注文が発生すること、利食いが多発すること、要人発言や別の経済指標が発表されること等で、上記の通りにならないケースもあります。
しかし、大局的に見れば、2016年12月28日現時点では、円安は円高に反転する可能性が高いというのは、高い可能性だと判断できます。
2週間後の答え合わせ
前述までの記事は2016年12月28日に書いたもので、現在は2017年1月11日です。約2週間経過し、年末年始をまたいだためそれほど市場は動いていませんがどうなっているかというと・・・
117.404 → 115.756
「164.8pips円高方向に動いた。」ということになります。
予想通り、シカゴIMM通貨先物ポジションの「買い」ポジションの偏りが大きくなったため、少しずつ「損切り」「利確」で手放す投機筋が出てきたことがわかります。
シカゴIMM通貨先物ポジションを見ると
「買い」ポジションの偏りが大きい → 少しのきっかけでトレンドが「下降」に転じる可能性が高い
という状況から、少しだけ「買い」ポジションの偏りが小さくなっていることが分かるかと思います。
ただ、まだまだ「買い」ポジションの偏りが大きい為、今後も円高が進む(というよりは、急激な円安が元に戻りはじめる)可能性が高いことを意味しています。
デイトレード、スイングトレードの参考データとしては十分に活用できるものと言えます。
シカゴIMM通貨先物ポジションの注意事項
金曜日の取引終了後に火曜日時点の数値が発表される形ですので、リアルタイムの統計ではありません。長めのトレンドを読む材料として考えましょう。
まとめ
スキャルピングトレードやデイトレードを中心とした短期取引のトレーダーであっても、大きな市場参加者のポジションの偏りというのは、抑えておくことをおすすめします。