- 「両建てを利用した節税って何?」
- 「海外FXの有効な節税方法を知りたい。」
今回は、海外FXの税金の節税で有効な「両建て」を活用した節税方法について解説します。
海外FXの税金のおさらい
海外FXの税金の特徴は
- 雑所得になる
- 総合課税が適用される(給与所得などと合算して計算)
- 損失繰越はできない
という特徴があり、申告分離課税で一律20.315%の税金が課税される国内FXと比較すると、税金は割高になるケースが多いです。
だからこそ、今回解説する「両建て」を活用した節税方法が有効なのです。
今回の節税策で確認しておくべきこと
未決済ポジションは、税金の対象損益になるかどうか?
という点です。
DMM FX
未決済ポジションは確定申告する必要はありますか?
【DMM FX】【DMM CFD】において、未決済ポジションは損益を確定していない(反対売買を行っていない)ため、課税対象外です。
「ポジション決済(反対売買)」もしくは「スワップ受取」を行った場合の決済損益・スワップポイントは課税対象となります。ただし、法人口座においては保有資産も課税対象になることがあります。
詳しくは最寄りの税務署にご相談ください。
FXプライム
未決済ポジションの評価益も課税の対象ですか。(『選べる外貨』『ちょいトレFX』)
回答
1月1日から12月31日(※)までの期間に確定した為替損益・スワップポイント損益の合計が確定申告の課税対象となります。
未決済ポジションの評価益については課税対象外です。※当社の場合は、1月1日(午前7時)から翌年1月1日(午前6時59分)までの取引が対象期間です。
外為どっとこむ
未決済ポジションは課税の対象となりますか?(法人)
法人の場合は、事業年度の末日において未決済の損益を課税所得計算に算入しなければならないため、同日時点の評価損益による確定申告が必要です。したがって法人のお客様に限り、未決済ポジションの評価益(含み益)は課税の対象となります。
つまり、
未決済ポジションは
個人:課税対象外
法人:課税対象
ということがわかります。
法人の場合は、未決済ポジションも、損益として扱わなければならないが、個人の場合は、決済が確定した損益のみが課税対象となるのです。
国税庁のウェブサイトでも
課税関係
平成24年1月1日以後に行われる外国為替証拠金取引(FX)の差金等決済により生じた損益の課税関係は、以下のとおりです。
(1) 差金決済による差益が生じた場合
(2) 差金決済による差損が生じた場合と書かれている通りで
あくまでも「決済による損益」が課税対象となるのです。
逆に言えば
保有ポジションの含み益であれば、どれだけ利益が出ていても、課税対象とならない
保有ポジションの含み損であれば、どれだけ損失が出ていても、課税対象とならない
ことになります。
これを活用したのが「『両建て』を活用した節税方法」なのです。
「両建て」を活用した節税方法
「両建て」を活用した節税方法とは?
「両建て」とは
同一の金融商品の「買い」と「売り」のポジションを同時に建てること
を言います。
- 米ドル/円 買い 10,000通貨
- 米ドル/円 売り 10,000通貨
というポジションを同時に保有していれば、それは「両建て」です。
為替変動があっても
「買い」「売り」のどちらかが利益が出ると
その反対方向のポジションが同じ損益が出る形になり
基本的にプラスマイナスゼロの損益が実現されます。
※スプレッド分、取引手数料分、スワップ差分の軽微な損失は発生します。
「両建て」を活用した節税方法では
- 未決済ポジションの損益は課税対象ではない
- 基本的に為替変動による損益はプラスマイナスゼロ
という特徴を生かして、節税するのです。
節税方法その1.年末に大きな含み益がでている未決済ポジションがあった場合
課税の対象は
1月1日から12月31日までの期間に確定した為替損益・スワップポイント損益の合計
です。
年末の段階で、未決済ポジションの高額な利益があった場合
- 利益確定しない → 課税対象にならない
ということを意味します。
「でも、含み益のあるポジションを決済しないと、為替変動で利益が目減り可能性があって怖い。」
という場合に「両建て」を活用します。
含み益の出ているポジションと逆方向に同額のポジションを持つ
対応をすれば
- 為替変動の影響を受けないで、含み益を維持できる
- 決済していないので、課税対象にならない
ということを実現できるのです。
節税方法その2.年末に大きな含み損がでている未決済ポジションがあった場合
年末の段階で、未決済ポジションの高額な損失があった場合
- 利益確定しない → 課税対象にならない
ということを意味します。
当然、損失ですから、決済したところで税金が増えるわけではありませんが・・・
その年はトータルで損失が出ており、これ以上損失が出ても、税金は変わらない
という場合に
含み損の出ているポジションと逆方向に同額のポジションを持つ
対応をすれば
- 為替変動の影響を受けないで、含み損を維持できる
- 決済していないので、課税対象にならない
ため、
翌年、決済すれば、翌年は一定額の「損失」を持ったまま、スタートすることができます。
翌年に利益が出た場合、移行した「損失」分、利益が減ることになり、節税になるのです。
海外FXでは、国内FXのように損失繰越の特例がありませんから、自発的に「両建てを活用した節税」を利用して、損失を繰り越すことが重要な節税につながるのです。
節税方法その3.年末に両建てポジションで損益を調整する
「その1」「その2」のように年末に、巨額な含み益、含み損がある未決済ポジションがない場合も、「両建てを活用した節税」が可能です。
例えば
12月1日の時点で
- 給与所得:400万円
- 海外FXの損益:+400万円(見込み)
となれば、800万円の所得として課税されます。
単身者で、何の控除もなければ
所得税:475,300円
住民税:458,900円
= 934,200円
の税金が発生します。
ここで
米ドル/円:105.00円の
- 買い:100万通貨(10ロット)
- 売り:100万通貨(10ロット)
を保有し
12月31日の時点で
米ドル/円:110.00円となっていた場合
- 買い:100万通貨(10ロット) → +500万円
- 売り:100万通貨(10ロット) → -500万円
という含み益、含み損が発生しています。
※スプレッドや取引手数料、スワップポイントは無視して計算しています。
12月31日の時点で
含み損が出ている売りポジションを決済すれば
- (未決済)買い:100万通貨(10ロット) → +500万円
- (決済)-500万円
が残ります。
決済した、-500万円のみが課税対象となるため
- 給与所得:400万円
- 海外FXの損益:-100万円(見込み)
となれば、300万円の所得として課税されます。
単身者で、何の控除もなければ
所得税:55,250円
住民税:120,500円
= 175,750円
の税金が発生します。
税額は、758,450万円も節税できているのです。
年が明けてすぐに
- (未決済)買い:100万通貨(10ロット) → +500万円
を決済することで
為替変動による影響は軽微で、翌年度に利益を繰り延べできたことになるのです。
手元にお金が必要な方でなければ、理論上、半永久的に利益の繰り延べが毎年できる計算になります。
結論
「両建て」による節税方法とは
年末に「未決済ポジション」と「決済ポジション」を損益に合わせて、決済することで
- 利益の繰り延べ
- 損失の繰り越し
が自由自在にできることを意味します。
海外FXは
- 利益額が大きくなると、税率・税額が課題になる総合課税
- 損失繰り越しの特例がない
という特徴があるため、国内FXよりも、「両建て」による節税のメリットは大きいのです。
「両建て」による節税方法の注意点
「両建て」による節税方法の注意点としては
- スプレッド・取引手数料・スワップ金利差のコストが発生する
- 2倍のポジションを持つため、一定額の証拠金が必要になる
- 年末と年越しの間で大きな為替変動があると、損益に影響が大きくなる
- 法人は利用できない
という4点です。
リスクやコスト負担が増えるメリットがあるため、節税効果と、どちらが大きいのか、事前にシミュレーションしたうえで、実行することをおすすめします。