海外FXはハイレバレッジでトレードができるため、資金力が少なくても、ある程度の通貨量でトレードが可能になります。だとすれば、勝率の高いテクニカルトレードの方が海外FXにはマッチするはずです。今回は初心者向けのテクニカルトレード方法ですが、「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」だけでトレードするとどうなるのか?1週間実験してみました。
「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」とは?
スパンモデルとは
元証券ディーラーの柾木利彦氏(マーフィー)が考案したテクニカル手法のことを言います。
一目均衡表の「雲」と「遅行スパン」のみで構成されており、形はほぼ同じです。一目均衡表とスパンモデルの違いは、一目均衡表は未来の雲ができているのに対して、スパンモデルは実勢レートと同じタイミングで雲が形成されていきます。
一目均衡表
スパンモデル
一目均衡表とスパンモデルを重ねて表示
一目均衡表の先行する「雲」の部分をリアルタイムの実勢レートにずらしたものが「スパンモデル」なのです。
遅行スパンは、リアルタイムの実勢レートをローソク足26個分後ろにずらしたものですので、重ねてもほぼ同じになっています。
人によって、どちらが良いのか?は賛否がわかれます。
一目均衡表の方が先行して雲が表示されるので未来がわかってトレードしやすいという方もいれば、スパンモデルの方が早くトレンドの転換がキャッチできるというのでトレードしやすいという方もいるのです。
今回のトレード手法は
トレンドの形成をいち早く知ることが目的
ですので、一目均衡表ではなく、スパンモデルを採用しているのです。
スパンモデルのMT4設定方法
スパンモデルはインジケーターをこちらからダウンロードして、MT4のデータフォルダに入れて利用します。標準搭載はされていません。
MQL4 → Indicators の中にダウンロードした「SpanModel.ex4」を入れれば、MT4のインジケーターの画面に「SpanModel」が登場するはずです。
スーパーボリンジャーとは
通常のボリンジャーバンドを±1σ、±2σ、±3σまで表示して、遅行スパンも表示させたもの
です。こちらも、柾木利彦氏(マーフィー)が考案したテクニカル手法となります。
こちらは通常のボリンジャーバンドと同じなので
- ±1σのラインの中に入る確率:68.26%
- ±2σのラインの中に入る確率:95.44%
- ±3σのラインの中に入る確率:99.73%
という確率でその線の中に実勢レートが入ることになります。
両者を表示させるとこうなります。
スパンモデルとスーパーボリンジャーをどう使うの?
今回は
- 遅行スパン
- スパンモデルの「スパン(雲の部分)」
- ボリンジャーバンドの±3σのライン
を使って、トレンドの形成をいち早く察知して、順張りを行うトレードを行います。
「遅行スパン」でトレンドの形成をチェックする方法
遅行スパンは
ローソク足26本分、遅れて表示される線
ですので
遅行スパンが実勢レートよりも上にある
= 26本前の実勢レートよりも、現在の実勢レートの方が上にある
= 上昇トレンド
遅行スパンが実勢レートよりも下にある
= 26本前の実勢レートよりも、現在の実勢レートの方が下にある
= 下降トレンド
と判断することができるのです。
「スパンモデル」でトレンドの形成をチェックする方法
スパンモデルの「スパン(雲の部分)」は
- 先行スパン1:当日の転換線と基準線の中間値を26日未来にずらしたもの
- 先行スパン2:過去52日分のローソク足の高値と安値の平均値を26日未来にずらしたもの
ですので
誤解を恐れず平たく言えば、26日と52日の平均値で囲まれた面積が「スパン(雲の部分)」となります。
「スパン(雲の部分)」よりも実勢レートが上にある
= 過去の平均値よりも、現在の実勢レートの方が上にある
= 上昇トレンド
「スパン(雲の部分)」よりも実勢レートが下にある
= 過去の平均値よりも、現在の実勢レートの方が下にある
= 下降トレンド
と判断することができるのです。
「ボリンジャーバンド」でトレンドの形成をチェックする方法
ボリンジャーバンドでは
- ±1σのラインの中に入る確率:68.26%
- ±2σのラインの中に入る確率:95.44%
- ±3σのラインの中に入る確率:99.73%
となるのですから、本来は
「±3σのラインにタッチする」ということは、そこからラインの中に収まる可能性が高い
と考えて、反対方向にポジションを持つ「逆張り」エントリーが主流なのです。
しかし、実際はボリンジャーバンド自体にも傾きがあるので、
「±3σのラインにタッチする」 = ±3σのラインに収まる可能性が高いが、強いトレンドが形成されている
と言い換えることも、できるのです。
実際にチャートを見てみると
「±3σのラインにタッチした」
→ ±3σのラインの中に戻りつつも、トレンドは伸びている
ことがわかるかと思います。
+3σのラインにタッチする、突き抜ける
= 強い上昇トレンドが発生中
-3σのラインにタッチする、突き抜ける
= 強い下降トレンドが発生中
となるのです。
「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」手法
- 遅行スパンが実勢レートよりも上にある
- 「スパン(雲の部分)」よりも実勢レートが上にある
- 「±3σのラインにタッチした」
3つのチェックポイントが合致したときに「買い」エントリー
- 遅行スパンが実勢レートよりも下にある
- 「スパン(雲の部分)」よりも実勢レートが下にある
- 「±3σのラインにタッチした」
3つのチェックポイントが合致したときに「売り」エントリー
というルールで「トレンド形成をいち早くキャッチし、トレンドの大部分の利幅を稼ぐ」トレード手法なのです。
エグジットのポイントは
実勢レートが再び「スパン(雲の部分)」とぶつかった時にエグジット
としています。
「トレンドの強さ」と「スパン」「実勢レート」の関係で言えば
- 離れていれば離れているほど → トレンドが強い
- 近づけば近づくほど → トレンドが弱い
- 実勢レートがスパンを抜ければ → トレンドの反転
ということになるので
トレンドが形成されてから、実勢レートが再び「スパン(雲の部分)」とぶつかった時というのは、トレンドが終わりに近づいているというサインなので、エグジットするのです。
「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」のメリット
- トレンドの形成段階でエントリーするので利幅を大きく稼ぐことが可能
- エントリーのルールが明確なので、誰がやっても同じタイミングでエントリーできる
「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」のデメリット
- トレンドの形成段階でエントリーするので「だまし」も多く、勝率が低い
- 1日1回~2回しかトレード機会はない
「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」で注意すべきこと
長期の時間足で大きなトレンドを確認する
このトレード手法は「順張り」を基本にしていますが
トレンドの形成段階のエントリー
を基本としているので、利幅は大きく取れるものの、「だまし」が多く、勝率も決して高くありません。
- 少しでも「だまし」の可能性を減らす
- 「だまし」にあったても、損失を減らす
ために
長い時間足のトレンドの順張り方向でしかエントリーしない
のです。
「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」/実験レポート
検証条件
採用したチャート
- スパンモデル:転換線9、基準線26、先行スパン52
- スーパーボリンジャー:±1σ、±2σ、±3σ
- 5分足、1時間足
- USD/JPY
採用したルール
- 長い時間足のトレンドの順張り方向でしかエントリーしない
- 3つのチェックポイントが合致したときに「買い」エントリー
- 遅行スパンが実勢レートよりも上にある
- 「スパン(雲の部分)」よりも実勢レートが上にある
- 「±3σのラインにタッチした」
- 3つのチェックポイントが合致したときに「売り」エントリー
- 遅行スパンが実勢レートよりも下にある
- 「スパン(雲の部分)」よりも実勢レートが下にある
- 「±3σのラインにタッチした」
- 実勢レートが再び「スパン(雲の部分)」とぶつかった時にエグジット
検証期間
2017年9月11日~2017年9月15日
1時間足のトレンド確認
上昇トレンドなので順張り方向の「買い」のみでトレード
9月11日
ポジション方向:買い
エントリー:108.702
エグジット:108.445
-25.7pipsの損失
ポジション方向:買い
エントリー:108.631
エグジット:109.431
+80.0pipsの利益
9月12日
ポジション方向:買い
エントリー:109.556
エグジット:109.381
-17.5pipsの損失
ポジション方向:買い
エントリー:109.521
エグジット:109.972
+45.1pipsの利益
9月13日
ポジション方向:買い
エントリー:110.097
エグジット:110.032
-6.5pipsの損失
ポジション方向:買い
エントリー:110.155
エグジット:110.478
+32.3pipsの利益
9月14日
ポジション方向:買い
エントリー:110.601
エグジット:110.533
-6.8pipsの損失
ポジション方向:買い
エントリー:110.613
エグジット:110.409
-20.4pipsの損失
9月15日
ポジション方向:買い
エントリー:110.422
エグジット:111.074
+65.2pipsの利益
結果
勝敗:4勝5敗
合計:+145.7pipsの儲け
考察
勝率は低いが十分な利益が出た。
勝率は9戦4勝ですから、44.4%です。つまり、5割を切っているのです。しかしながら、勝つときは55pips、負けるときは15pipsという損小利大の結果となっているので、全体で見れば「+145.7pips」とかなり高い損益を出しています。
- 利益が出たときの平均値:+55.6pips
- 損失が出たときの平均値:-15.4pips
3倍~4倍の利益を出せるので、勝率が5割を切っても、十分な損益になっているのです。
トレード機会は少ない
1日1回~2回のトレード機会しかありません。
0.27%しか発生しない「±3σ」をエントリータイミングにしているので、トレード機会が少ないのは当然なのです。
複数の通貨ペアでトレードする等、トレード回数を増やす工夫が必要になります。
トレンドの判断に他のテクニカル分析指標を使っても良い
今回の検証期間は
1日1回ぐらいは大きなトレンドが発生していました。トレンドが発生したときはきれいに利幅が伸びているのです。
逆にレンジ相場では今回の手法は役に立たないのです。
だとすれば、今回は利用しませんでしたが・・・
移動平均線を複数設定して、傾きからトレンド発生を知る
という判断もあったかと思います。
ボリンジャーバンド、遅行スパン、スパンモデルと複数のテクニカル分析指標が表示されているので、これ以上あると逆に複雑になりすぎてしまいますが、上手く取捨選択して、トレンドの発生をもう少し精度を高く知ることで、勝率を上げられる可能性があります。
ボラティリティの高い通貨ペアが狙い目
この手法はどの通貨ペアでも通用します。
しかし、残念ながら「レンジ相場」が長ければ長いほど、「だまし」の確率も増え、負けが込んでしまいます。
トレンドが形成されやすいボラティリティの高い通貨ペア(例:英ポンド/円、英ポンド/ドル)でトレードをする方が勝率が高くなる可能性があります。
勝率を高める工夫の余地は大きい
今回のトレード手法は、勝率が低いのですが、利幅をキープしながら、勝率を高める余地も多くあると考えられます。
例えば
- 上記のエントリー時にはエントリーせずに、指値注文を入れて、そこから数pipsトレンドが伸びたタイミングでエントリーする形にすれば、「だまし」も減らすことができるはずです。
- 他にも、途中でエグジットポイントが来て、エグジットしたとしても、その時点は「押し目」「、戻り」で、もう一度トレンドが形成されたら、そのときにもポジションを持つということもできます。
試行錯誤して、自己流にカスタマイズして、勝率5割以上、利幅は1回平均50pips超を狙っていきましょう。、
まとめ
「スパンモデルとスーパーボリンジャーによる順張りトレード」は、今回の検証期間でも十分な利益が出ました。
ただし、トレンドの形成をいち早くキャッチして、トレンドの端から端までを食べる手法ですので、「だまし」が多いことが最大のデメリットとなります。
「だまし」を0.0%にすることはできませんが、エントリータイミングの工夫や他のテクニカル分析指標との併用など、工夫をすれば勝率5割を超えるのはそれほど難しいことではないはずです。中級者以上の投資家におすすめできるトレード手法と言えます。