海外FX実証実験レポート「指標発表スキャルピングトレード」

海外FXはハイレバレッジでトレードができるため、資金力が少なくても、ある程度の通貨量でトレードが可能になります。だとすれば、勝率の高いテクニカルトレードの方が海外FXにはマッチするはずです。今回は初心者向けのテクニカルトレード方法ですが「指標発表スキャルピングトレード」でトレードすると結果はどうなるのか?約半年間実験してみました。

「指標発表スキャルピングトレード」とは?

指標発表とは?

世界各国が発表する「経済指標」のこと

を言います。

経済指標には

  • 政策金利
  • 雇用統計(失業率・雇用者数推移)
  • GDP
  • 消費指数
  • 小売売上高
    ・・・

などの様々な指標があり、世界各国が自国の情報として公表しているのです。

日本だけで見ても、これだけの「経済指標」がたった1カ月間の間に発表されているのです。

2018年4月に発表された日本の経済指標

  • 日銀短観・四半期大企業製造業業況判断
  • 1-3月期 日銀短観・四半期大企業製造業先行き
  • 1-3月期 日銀短観・四半期大企業全産業設備投資 [前年度比]
  • 3月 マネタリーベース [前年同月比]
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対外中長期債)
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対内株式)
  • 2月 全世帯家計調査・消費支出 [前年同月比]
  • 3月 外貨準備高
  • 2月 毎月勤労統計調査-現金給与総額 [前年同月比]
  • 2月 景気先行指数(CI)・速報値
  • 2月 景気一致指数(CI)・速報値
  • 2月 国際収支・貿易収支
  • 2月 国際収支・経常収支
  • 3月 消費者態度指数・一般世帯
  • 3月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI
  • 2月 機械受注 [前月比]
  • 3月 国内企業物価指数 [前月比]
  • 3月 国内企業物価指数 [前年同月比]
  • 黒田東彦日銀総裁、発言
  • 3月 マネーストックM2 [前年同月比]
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対外中長期債)
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対内株式)
  • 2月 鉱工業生産・確報値 [前月比]
  • 3月 貿易統計(通関ベース)
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対外中長期債)
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対内株式)
  • 3月 全国消費者物価指数(CPI) [前年同月比]
  • 3月 全国消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く) [前年同月比]
  • 2月 第三次産業活動指数 [前月比]
  • 3月 企業向けサービス価格指数 [前年同月比]
  • 2月 景気先行指数(CI)・改定値
  • 2月 景気一致指数(CI)・改定値
  • 2月 全産業活動指数 [前月比]
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対外中長期債)
  • 前週分 対外対内証券売買契約等の状況(対内株式)
  • 日銀・金融政策決定会合(1日目)
  • 3月 失業率
  • 3月 有効求人倍率
  • 4月 東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く) [前年同月比]
  • 3月 鉱工業生産・速報値 [前月比]
  • 3月 小売業販売額 [前年同月比]
  • 3月 百貨店・スーパー販売額(既存店) [前年同月比]
  • 3月 新設住宅着工戸数 [前年同月比]
  • 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
  • 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)
  • 日銀金融政策決定会合、終了後政策金利発表

為替レートに影響を与える「経済指標」には「要人発言」「記者会見」なども含まれます。日本の場合は、日銀黒田総裁の発言や、アメリカの場合は米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言などが注目されています。

「経済指標」は、その国や世界の経済動向を知る術となるため、世界中の投資家が注目しており、「経済指標」発表後には為替レートが大きく変動する傾向があります。

この「経済指標」発表後の為替レートの急変動を利用したトレード手法のことを「指標トレード」と言います。

今回のトレード手法では「指標発表」の中で最も注目されている「米国雇用統計」を活用します。

今回のトレード手法は

「米国雇用統計」の指標発表の為替レートの急変動を利用したスキャルピングトレード

ということになります。

「米国雇用統計」とは?

アメリカ労働省の労働統計局が毎月発表する重要な雇用に関する指標のこと

です。

米国雇用統計の特徴

発表される内容

失業率
非農業部門雇用者数
週労働時間
平均時給
建設業就業者数
製造業就業者数
金融機関就業者数
など

発表時間

毎月第一金曜日

日本時間(夏時間21:30、冬時間22:30)

※夏時間は3月~10月ごろですが、国、地域、都市でいつ夏時間を開始するのか?いつ夏時間が終了するのか?は毎年変わってきます。

アメリカ/ニューヨーク

夏時間の開始 夏時間の終了
2019年 2019/03/10(日) 03:00 2019/11/03(日) 01:00
2018年 2018/03/11(日) 03:00 2018/11/04(日) 01:00
2017年 2017/03/12(日) 03:00 2017/11/05(日) 01:00

といった形です。

調査対象

全米の約16万の企業や政府機関のおよそ40万件のサンプルを対象に調査

調査機関

アメリカ労働省 労働統計局

この米国雇用統計の中でも、最も世界中の投資家が注目しているのは「非農業部門雇用者数」という指標です。

非農業部門雇用者数とは

農業部門を除いて、民間企業や政府機関に雇用されている方の人数のこと

を言います。

なぜ、「非農業部門雇用者数」が世界中の投資家に注目されているのか?

世界中の景気を左右するのはアメリカの景気であることは、間違えありません。

米国は世界一の消費大国であり、輸入大国でもあります。

米国の景気が冷え込めば、消費も冷え込むので、輸入が激減します。米国の輸入が減れば、米国へ輸出をしている世界各国の企業の業績が落ち込みます。結果として、世界中の景気が悪化するのです。

輸入だけではありませんが、米国の景気が世界の景気をリードしているのは、間違えない事実なのです。

だからこそ、世界中の投資家は「米国の景気」に注目しているのですが

「米国の景気」をリアルタイムに反映する経済指標が「非農業部門雇用者数」だと考えられています。

なぜなら

米国企業は業績が良ければ採用を増やし、業績が悪ければクビを切る、非常に業績に対して迅速に雇用調整を行う傾向があります。

終身雇用が前提としているため、業績が悪化しても、なかなかリストラに踏み切れない日本企業とは、全く別の文化と言っていいでしょう。

業績に対して迅速に雇用調整を行うからこそ

  • 「非農業部門雇用者数」が前月対比で増えたのか?減ったのか?

というのは、リアルタイムで米国の景気を知る手段となりうるのです。

しかも、「非農業部門雇用者数」は、農業を除く民間企業や政府機関などの給与支払い帳簿を基に集計されています。

「サンプル調査」や「アンケート調査」ではありませんので、非常に精度の高いデータになるのです。

だからこそ、世界中の投資家は、米国の景気を「ほぼリアルタイム」で「高い精度」で表す「非農業部門雇用者数」を常にチェックしているのです。

「指標発表スキャルピングトレード」手法の考え方

今回の「指標発表スキャルピングトレード」では、「非農業部門雇用者数」の発表後の為替レートの急変動を利用したトレードです。

「非農業部門雇用者数」は世界中の投資家が注目している経済指標ですので

発表後は、為替レートが急変動します。

しかし、この発表後の為替レートの急変動で「どちらに変動するのか?」を予想するのはかなり難しいことなのです。

なぜなら、

  • 「非農業部門雇用者数」が前月対比で増えた → ドル高
  • 「非農業部門雇用者数」が前月対比で減った → ドル安

とはならないからです。

どうしてかというと、多くの投資家は「今月は非農業部門雇用者数が増えそうだな。」「今月は非農業部門雇用者数が減りそうだな。」というのを、あらかじめ織り込んで為替レートが形成されているからです。

  • 「非農業部門雇用者数」が投資家の事前の予想よりも増えた → ドル高
  • 「非農業部門雇用者数」が投資家の事前の予想よりも減った → ドル安

というような傾向が強いのです。

世界中の投資家が「どちらに織り込んでいるのか?」を理解した上で、「実際の集計結果が予想と比較してどちらに触れるのか?」を知ることは非常に難しいことなのです。

今回のトレード手法では

「非農業部門雇用者数」発表後の為替レートの急変動が「上昇」「下降」どちらに動いても、利益が出る形のトレード

を前提としています。

  • 「非農業部門雇用者数」発表後の為替レートが急上昇 → 利益が出る
  • 「非農業部門雇用者数」発表後の為替レートが急下降 → 利益が出る

状態を作ります。

「指標発表スキャルピングトレード」手法とは?

ルールその1.指標発表前に「逆指値注文」を両方に入れる

「逆指値注文」とは

  • 今よりも、為替レートが上昇したら「買い」注文を入れる
  • 今よりも、為替レートが下降したら「売り」注文を入れる

という注文手法です。

指標発表前は「レンジ相場」になる傾向が強いので

直近2時間のレンジ相場の高値・中間・安値を測定し、レンジ相場から2倍の位置に「逆指値:買い注文」「逆指値:売り注文」を入れます。

レンジ相場が

高値:110.90
中間:110.80
安値:110.70

だとすれば、中間値から上下に10pipsがレンジ相場の幅ですので、その倍の20pipsのところに逆指値注文を入れます。

逆指値:買い注文:111.00
高値:110.90
中間:110.80
安値:110.70
逆指値:売り注文:110.60

これは、指標発表前に「逆指値注文」が発動しないためです。

ルールその2.「逆指値注文」と同時に20pipsの利幅を確保して「決済指値注文」を入れる

為替レートの変動は、かなり急激に起こるため、「成行き注文」では、スリッページが大きく発生したり、タイミングを逃したりで、利益を確保しにくいのです。

そのため、あらかじめ20pipsの利幅を確保して「決済指値注文」を入れます。

上記の例で言えば

利確:決済指値注文:111.20
逆指値:買い注文:111.00
高値:110.90
中間:110.80
安値:110.70
逆指値:売り注文:110.60
利確:決済指値注文:110.40

ということになります。

この状態を指標発表前に作ることで、指標発表後のどちらに為替レートが変動しても、利益を確保することができるのです。

MT4を利用した「逆指値注文」「決済指値注文」の方法

MT4は残念ながら、新規注文でOCO注文をすることができません。

そのため、「買い」側の注文をするのであれば

1.新規注文をクリックする

2.注文種別を「指値または逆指値注文(新規注文)」にする

3.「Buy Stop」注文を入れる

4.作成した逆指値注文の上で右クリックして「注文変更または取消」をクリックする

5.決済注文の「指値」「逆指値」を入力する

という流れになります。

「指標発表スキャルピングトレード」のメリット

  • 予想する必要がない
  • 勝率が高い
  • エントリーの方法が明確

「指標発表スキャルピングトレード」のデメリット

  • 月1回しかチャンスがない

「指標発表スキャルピングトレード」で注意すべきこと

負けるパターンで多いのは

「逆指値注文」が発動したが、20pips先の「利確:決済指値注文」に届かずにトレンドが逆転した。

というケースです。

これを回避するためには

  • 「利確:決済指値注文」を入れる時に「損切:決済逆注文」も入れておく

ということで、ある程度損失を限定することができます。

また、

  • 値動きの勢いが止まったら、エグジット
  • 値動きが逆行したら、エグジット
  • 30秒以上経過したら、エグジット

というようにご自身の判断でも、上記の条件に合致したら「エグジット」することを心がけましょう。

「指標発表スキャルピングトレード」実験レポート

検証条件

採用したチャート

  • 1分足(※検証データは見やすくするため5分足になっています。)
  • 米ドル/円

採用したルール

  • 指標発表の2時間前のレンジ相場の高値・安値の幅の2倍の位置に「買い:逆指値注文」「売り:逆指値注文」を設定する
  • 20pipsの利幅を確保して「買い」「売り」ともに「決済指値注文」を設定する
  • 「決済指値注文」に届かない場合は、エグジット基準に即してエグジットする

検証期間

2017年9月1日~2018年4月6日

2018年4月6日

ポジション方向「売り」
エントリー:107.214
エグジット:107.359

-14.5pips損失

2018年3月9日

ポジション方向「買い」
エントリー:106.884
エグジット:106.831

-5.3pips損失

2018年2月2日

ポジション方向「買い」
エントリー:109.998
エグジット:110.201

+20.3pips儲け

2018年1月5日

ポジション方向「売り」
エントリー:113.157
エグジット:113.119

+3.8pips儲け

2017年12月8日

ポジション方向「売り」
エントリー:113.415
エグジット:113.213

+20.2pips儲け

2017年11月3日

指標発表前の為替変動が大きすぎるので見送り

2017年10月6日

ポジション方向「買い」
エントリー:113.061
エグジット:113.267

+20.6pips儲け

2017年9月1日

ポジション方向「売り」
エントリー:110.05
エグジット:109.839

+21.1pips儲け

結果

勝敗:6勝2敗
合計:+66.2pips

考察

勝率がかなり高いトレード手法

勝率:71.4%

ですから、精度を上げていけば勝率8割も目指せるトレード手法と言えます。

トレード機会が少ない

米国雇用統計の「非農業部門雇用者数」の発表は、月1回しかチャンスがありません。

月1回だと、日常的に利用できるトレード手法にはならないのです。

そのため、トレード機会を増やすためには

別の経済指標も選択肢に入れる

必要があるのです。

経済指標にはボラティリティが高いものと低いものがあります。

  • 重要性が高い経済指標
  • ボラティリティ(変動幅)が大きい経済指標

を選択して、「非農業部門雇用者数」以外の経済指標発表時にもトレードできるようにしましょう。

経済指標カレンダー – Yahoo!ファイナンス

まとめ

「指標発表スキャルピングトレード」では

  • 勝率が高い
  • 発表前に事前に注文を設定できる

という特徴があるため、初心者でも儲けられるトレード手法となっています。

ただし、大きな問題点として

  • エントリーチャンスが月1回しかない

という問題があります。

トレードする「指標発表」を増やすなど、工夫をしてトレード機会を増やす必要があります。

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