フランスパリの郊外で、2015年11月13日午後9時頃、世界を揺るがすニュースが届きました。同時多発テロです。IS(イスラム国)が起こしたとされる同時多発テロは多くの犠牲者を生みましたが、5日が経過した執筆時点でも、全容はあきらかになっていません。
IS(イスラム国)は今後もテロを起こすことを予告しているような状況であり、これは日本も他人ごとではありません。当然、テロの影響は世界経済にも多くのダメージを与えることが予測され、FXを行っている投資家にとっても、「テロが起きているからトレードをしない。」というわけにはいかない日常になってしまっているのです。
今回のフランスパリ同時多発テロによる今後の為替相場への影響について考察しました。
フランス・パリ同時多発テロの概要
2015年11月13日午後9時頃、フランスのパリ郊外サン=ドニの多目的スタジアム・スタッド・ド・フランスでサッカーの国際親善試合「フランス対ドイツ戦」が行われていました。
フランスは「イスラム国」空爆で米国を中心とする有志国連合に参加しており、フランスのオランド大統領もこのサッカーの親善試合を観戦していました。
- この試合会場の入り口付近や近隣のファストフード店で爆発
- その後、午後9時30分ごろに、パリ中心部である10区と11区の料理店やバーで爆発
- アメリカのイーグルス・オブ・デス・メタルのコンサートが行われていた劇場「バタクラン」で襲撃
と立て続けに色々な場所でテロ事件発生し、執筆時点(2015年11月18日)では129名以上の方が犠牲になったと報道されています。
IS(イスラム国)が犯行声明を出していますが、実行犯は過激化したフランス人ら欧州出身者によるホームグロウン(自国育ち)テロリストと考えられており、難民受け入れによるマイナスの結果が出てしまっていることが、フランスだけでなく世界中で深刻な問題と考えられているのです。
フランスは国際大会を中止にしたり、国境を閉鎖するなどの対応を行い、非常事態宣言を出しています。日本、アメリカなど世界各国はフランスへの弔意を伝えると共に国際的に連携したテロ対策の強化を検討し始めているのです。
過去のテロ事件と為替相場への影響をチェックする
テロ事件というのは頻繁に起こるものではなく、今後の為替相場を予想するのは難しいのですが、それでも過去に学ぶのが最短の近道と言えるでしょう。過去のテロ事件とその後3か月ほどの為替相場の変動をまとめました。
2015年1月7日:「フランス」シャルリー・エブド事件
2015年1月7日、フランスのパリ11区にある風刺週刊誌を発行している「シャルリー・エブド」本社に、覆面をした複数の武装した犯人が襲撃した事件のことです。
ユーロ/米ドル
事件のときは景気悪化による量的緩和で売られている状況にありましたが、そのままユーロ安が進行した形になります。テロ事件としては今回のものよりはかなり規模が小さく、世界的にもそれほどニュースになっていないため、為替相場への影響というのは軽微だったと考えられます。ただし、それでもユーロ安は進行した結果となっているのです。
2004年3月11日:「スペイン」マドリード列車爆破テロ事件
2004年3月11日にスペインの首都マドリードで起こった爆弾テロ。191人が死亡、2000人以上が負傷した事件のことです。
ユーロ/米ドル
この時は、1ヶ月~2ヶ月はユーロ安が進行しました。その後反転し、3か月目にはテロ発生時点と同じ水準に戻る形となっています。ユーロ安が進行したと言っても、それほど下落率が大きい変動ではありませんでした。
2001年9月11日:「アメリカ」米同時多発テロ
2001年9月11日にアメリカ合衆国内で同時多発的に発生した、旅客機がハイジャックされたテロ事件のことです。
米ドル/円
世界を震撼させた911の同時多発テロですが、1ヶ月ほどは、一時的にドル安(円高)に動きましたが、その下落率もそれほど大きくなく5円程度でした。その後、「アメリカがテロに屈しない」という毅然とした姿勢を鮮明にしたことで、米国経済に対する不安感や不信感よりも、テロへ立ち向かう共通意識が生まれ、これが相場に影響したのかは不明ですが1カ月後には元の水準に戻り、それ以降は逆にドル高(円安)に相場は動きました。
テロ発生から執筆時点(2015年11月18日)までのチャート
ユーロ/米ドル
ユーロ/円
米ドル/円
考察
- ユーロ/米ドルの下落(ドル高)
- ユーロ/円の上昇(円高)
- 米ドル/円の上昇(円高)
チャートを見れば、わかりやすくユーロ安が進行していることがわかります。ユーロが売られた反動でドル高、円高が進んでいますが、米ドル/円相場で見ても、円高の傾向が強く出ています。世界経済が悪化した場合の円買によるリスクヘッジが顕著になってきているということです。
今後の為替相場の予測
過去のテロ事件と為替相場の影響を見ると
- 1ヶ月~2ヶ月ほどはユーロ安が進行する
- それほど下落率は大きくなく、緩やかに為替相場が動く
可能性が高いと考えられます。
現時点では、事件の全容も不透明で、IS(イスラム国)は「今後もテロが起こる」という生命を発表し、フランス政府も「テロが起きる可能性がある」と公表している状態です。
全容が明らかになる、テロが頻発することへの不安が解消するまでは、緩やかにユーロ安が進む可能性が高いのです。
IS(イスラム国)は「アメリカにもテロを行う」と言っているため、ドル高、円高が進んでいるとはいえ、ドルよりも円高が進む可能性が高いと考えられます。。
ただし、アメリカ同時多発テロのときは不安が一服して、アメリカのテロと戦う姿勢が鮮明になると同時に1カ月後には反転してドル高が進む形となりました。
今回のパリ同時多発テロで同じような動きになるとは限りませんが、世界各国が対テロで強調してIS(イスラム国)への対応を推し進めることがあるのであれば、1ヶ月~2ヶ月経過後にはユーロも反転する可能性は高いと考えられます。
逆に、IS(イスラム国)が同じようなテロを頻発させるようなことがあれば、ユーロ安の状態というのは、長引くケースも考えられるのです。
世界的な事件ではありますが、為替相場が急変動するというよりは、緩やかに動く可能性が高いと考えられます。引き続き、世界各国のテロ関連のニュースを注視しておきましょう。