日銀のマイナス金利政策による海外FXへの影響は?

日銀は2016年1月29日の金融政策決定会合で、当座預金に0.1%の「マイナス金利」を適用する追加緩和を決めました。

背景にあるのは、中国株の急落や米国の利上げから発生した国際金融市場の混乱や原油安で物価目標の2.0%達成時期が遅れるリスクが高まったとして導入を決めた「マイナス金利」ですが、海外FXをする上ではどんな影響があるのでしょうか?

今回導入されたマイナス金利の中身

  • 日銀当座預金に-0.1%のマイナス金利を適用
  • 必要な場合は金利をさらに引き下げる(マイナス幅を拡大する可能性がある)
  • 欧州(スイスなど)で採用されている階層構造方式を採用

160130minuskinri

※「基礎残高」「マクロ加算残高」「政策金利残高」の定義がいまのところ不明

マイナス金利導入にいたった背景

中国経済の急落、米国利上げ、原油安の影響により、円高が進んでしまったため、株安が同時進行してしまったことが大きな要因となっています。

2016年7月に控えた参院選を前に、この段階での景気の失速というのは、安倍政権と二人三脚ですすんできた日銀としては許容できない限界点を超えてしまったということです。

日経平均株価

160130kabuka

17,000円が最低ラインに設定されていたといわれています。

1月11日、黒田日銀総裁がフランスでの講演をキャンセルし、緊急帰国したことも年始からの円高株安が急伸したために安倍政権が呼び戻したといわれています。

円高株安で選挙になることは是が非でも避けなければならない!

という緊急性の高い事態への対策として「マイナス金利導入」が決定されたのです。

マイナス金利導入のFXへの影響は?

マイナス金利導入の狙い

表面的には

  1. マイナス金利の導入
  2. 銀行が日銀に預金をしても利息がつかずに利息が取られてしまう
  3. 銀行は日銀の預金を企業への投資に回す
  4. 実体経済に投入されたお金が増えるのでインフレになる

というシナリオですが、本当に当座預金の一部に0.1%のマイナス金利をつけたからと言って、「銀行が企業融資にお金を回すのか?」というのは大きな疑問なのです。

しかも、依然として「企業自身が設備投資に積極的にならない」「投資をする先が見つからない」という状態は変わっていないのです。

日銀も、建前上は上記のようなシナリオで話しますが、実体経済がそう動くとは考えていないのではないでしょうか。

本当の目論見は

  1. マイナス金利の導入
  2. 円安が進む
  3. 輸出企業の業績が上がる
  4. 株価が高くなる
  5. 選挙の前には「経済政策が上手くいっている」と言いたい

というのが本音でしょう。

「国債買い入れの量的緩和だけじゃないんだぞ!」
「マイナス金利拡大というカードもあるんだぞ!」

と投資家をけん制するための金融政策である意味合いも高いのです。

黒田総裁の任期は2018年、同時解散も検討されている衆院選が2016年7月・・・、長期的なインフレ誘導以上に自身の体制を守りたいがゆえの、緊急オペレーションという見方が強いのです。

実際には、日銀のバランスシートを見れば国債買い入れ型の量的緩和が限界に近付いているのは一目瞭然です。

「日銀もやれることなくなったな。」と投資家に見限られてしまったら、それこそ株価が下がってしまうので、まだまだカードを持っているぞという雰囲気を作るためのマイナス金利の導入という方がしっくりくるのです。

実際にマイナス金利導入後はどうなるのか?

当然、一時的には円安になります。

政策金利が低い通貨よりも、政策金利が高い通貨に資本は流れるので、一時的に円安になるのは間違えありません。

記憶に新しいのは、ECB(欧州中央銀行)が主要預金金利を2014年6月5日にマイナスにしています。

その後の、ユーロ/米ドルはどうなったかというと・・・

ECB(欧州中央銀行) 2014年6月 0.1% マイナス金利導入
ECB(欧州中央銀行) 2014年9月 0.2% マイナス金利拡大
ECB(欧州中央銀行) 2015年1月 量的緩和導入

ユーロ/米ドル

160130eurusd

ときれいに金利政策をとった期間はユーロ安、通貨安を誘導しているのです。

当然、日本円も、マイナス金利の導入は円安誘導を引き起こすことが予想されるのです。

円安誘導が期待できるマイナス金利の副作用とは?

マイナス金利の導入が黒田日銀の金融政策の限界を示す結果に

「国債買い入れの量的金融緩和以外にもカードがあるんだよ。」とアピールしたつもりが、実際には国債買い入れはやりつくしてしまって、どうにもならないから副作用の大きいマイナス金利を導入したとみられてしまえば、投資家から逆に「もう株価上がらないんじゃないの。」と見限られてしまう可能性があるのです。市場では失望売りが増えてしまうのです。

カンフル剤を入れたとしても、長期的には円高傾向

世界の情勢不安や原油安、中国経済の失墜という世界経済の流れの中で、多少のマイナス金利の導入というのは、一時的な効果しか生まない可能性があります。

国際的な大きな流れは、リスクオフであり、日本円の価値がそこまで下がらない可能性があるのです。少し経てばまた円高になる、可能性は捨てきれません。

銀行の収益性の悪化

今の当座預金のマイナス金利の適用ぐらいであればそれほど問題はありませんが、今後、段階的なマイナス金利幅の拡大をするのであれば、銀行や金融機関の収益性が悪化し、かえって企業への融資を敬遠してしまう可能性があります。

企業の設備投資が活発化しなければ実体経済は良くならないため、「円安による株高維持」という不安定な状況が続くことになるのです。

まとめ

「世界的な円高の流れ」とそれに反抗するようにカンフル剤を打ちまくる「日銀による円安誘導」という構図がはっきりしたと言っていいでしょう。

今後も、日銀の動向を注視する必要がありますが、夏の参院選前にもう一度円高圧力が高まれば、マイナス金利の拡大や国債買い入れという手段も考えらるのではないでしょうか。

日銀の制作と為替はわかりやすい相関性があるため、海外FXで儲けるためには短期トレード中心の方もチェックしておくと良いでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です