連日、ニュースで北朝鮮とアメリカの緊張が高まってきたことが報道されています。日本に核ミサイルが飛んでくるとしたら、FXの為替予想をしている場合ではないのですが、実際に「北朝鮮とアメリカが戦争をしたら」「日本にミサイルが着弾したら」為替相場はどうなるのでしょうか?今回は北朝鮮リスクでFX・為替相場はどうなるのか?「北朝鮮リスクでFX・為替相場への影響」について解説します。
前提として
- 北朝鮮とアメリカが戦争をするのか?
- アメリカが北朝鮮に先制攻撃をするのか?
- 日本に北朝鮮は核ミサイルを撃ち込むのか?
・・・
これらは、世界の政治の専門家にお任せして今回は触れません。というかわかりません。もし、北朝鮮とアメリカが戦争をしたら、日本にミサイルが着弾したら、為替相場はどう動くのか?について解説します。
過去の振り返り
2011年:東日本大震災の時の為替相場
- 発生直後に8%も円高に
- その後も、なだらかな円高が進む
2003年:イラク戦争時の為替相場
- 大きな変動はない
- 半年後円高に
2009年:北朝鮮のミサイル発射、核実験
- 一時的に円安に振れる動きもあるが、長期的には円高傾向
米軍のシリア攻撃があった週の騰落率
出典:日本経済新聞
考察
結局、上記の過去のデータでは「円高ドル安」になっていることがわかります。直近のシリア攻撃でも、主要通貨で一番高騰したの日本円になっています。
東日本大震災などは直接的に日本にダメージが発生したのですから、日本の経済力は停滞し、通貨の価値も落ちそうなものですが、実際には円高が進むことになりました。
これは日本の経済ダメージと日本円の為替相場には関連性が薄いことを示しています。これはなぜなのでしょうか?
「有事の円買い」がここまで定着している理由
日本円を買っている主要プレイヤーは外国人投資家
世界中の投資家の考え方
ボラティリティが低い局面
トレンドが発生しにくいのですから、相場の変動で利ザヤを抜くことが難しく、通貨の金利差で儲けることを重視するのです。スワップ金利をイメージすればわかりやすいかと思います。
この局面では
- 低金利通貨を「売る」
- 高金利通貨を「買う」
動きになります。
低金利通貨を売って、高金利通貨を買えば、利ザヤで儲かるのです。
ボラティリティが高い局面
ボラティリティが高まれば、大きく儲けられる可能性もありますが、大損する可能性も出てくる局面です。資産運用のポートフォリオの中では、ポジションを閉じる必要性も出てくきます。
この局面では
- 低金利通貨を「買う」
- 高金利通貨を「売る」 → 高金利通貨は国が破たんするなどのリスクも大きい
動きになります。
2017年1月の主要通貨の政策金利比較
これと先ほどの米軍のシリア攻撃があった週の騰落率を比較してみれば一目瞭然ですが
政策金利が低金利の「日本円」が買われて
政策金利が高金利の「豪ドル」が売られて
いるのです。
「韓国ウォン」も政策金利は1.25%ですから、高金利通貨となります。
つまり「有事の円買い」のメカニズムは
外国人投資家が
ボラティリティが低い局面で
低金利通貨である「日本円」を売る動きをしていたが
ボラティリティが高くなる = 世界経済の危機が高まると
ポジションを解消する動き = 「日本円」の買いでポジション解消するため
日本経済がどうであろうが、日本円は円高に推移する
というものなのです。
つまり、ポジションの解消ですから、日本の状態は関係ないのです。
大げさなことを言えば
アメリカが北朝鮮に先制攻撃をして、その反発で北朝鮮が東京に核ミサイルを撃ち込んだとします。
これを見た海外の投資家はポジションを解消する動きに出るので「円高」になります。
日本の首都機能が壊れても「円高」
というよくわからない状況になるのです。
日本の対外純資産売却が「円高要因」になる
また、日本は世界最大の対外純資産残高を持つ国でもあります。
- 年末時点対外資産1003兆円
- 対外負債は645兆円
- 純資産は358兆円
です。
日本人はそもそも、海外に資産を多く持っているのです。
危機のレベルにもよりますが
日本で生きていけるレベルの危機であれば、手元に日本円の現金を持っていた方が安心できるため「海外の資産を売って、日本円を買う」ことになります。これも「円高」材料となります。
さらに、外国人投資家が恐れているのは
「日本に北朝鮮の攻撃などで大きなダメージが起きたら、日本はこの対外純資産を売却して、国の復興の資金に使うんじゃないか?」
という疑念です。
北朝鮮の攻撃による日本のダメージが申告であればあるほど、対外純資産の売却(≒円買い)に動くので円高になると、外国人投資家が考えているので北朝鮮リスクが高まれば高まるほど「円高」になるということなのです。
「有事の円買い」はファンダメンタルズ分析の確実性の高い法則になってしまった。
上記の
- ボラティリティが高まる状態で低金利通貨を買う(高金利通貨のポジションを解消する)動きが強まるための「円高」
- 日本にダメージがあれば、復興するために「対外純資産を売却するのでは?」という疑念が強まるための「円高」
が定着してしまって、前述した通り
- イラク戦争
- 東日本大震災
- 北朝鮮の核実験
で、必ず「円高」になってしまっているのです。
世界的に見ても、
「有事の円買い」は当たる可能性が高い法則
と定着してしまっているのです。
上記の具体的な要因による「円高」に加えて、「円高」になるということに乗っかった「円買い」が加わるので、どんどん「有事の円買い」の確実性が高まっているのです。これは10年前、20年前、30年前と比較すれば明らかです。
【注意】そのまま100 %「円高」が進むとは言い切れない!
一時的に「円高」になるのは、かなりの高い可能性だと考えられます。
外国人投資家も「円」を買っているのではないのです。不安を感じてポジションを解消しているだけですから、高い確率で円高になる可能性があります。
しかし、もし仮に
- 東京に核ミサイルが撃ち込まれて、首都機能が破壊されてしまったら
- 北朝鮮が反撃の対象として日本を重点的に攻撃したら
- 日本政府の機能がマヒしたら
・・・
どうなるでしょうか?
- 資産を持っている日本人は海外に逃げるかもしれません。
- 日本円で資産を持っているよりも、海外の通貨にしておいた方が資産が守られると考えるかもしれません。
「日本人は日本で生きていきたい。」と思う方の方が圧倒的に多く、昨今のISのテロ活動を見ても、「日本の方が安全」と思っている方が多いのが現状です。
しかし、北朝鮮リスクで日本経済が破たんの危機に直面したときに
同じ考えでい居続けられるとは到底思えません。
日本人の3分の1の人が
資産の半分でも米ドルに替えておいた方が
いざというときに安心できる
と考えただけでも、「ドル買い」「円売り」 → 「円安」に推移してしまうのです。
とくに金融機関、機関投資家、個人投資家など相当額の資金を持っている投資家の考え方次第では、円安が進む可能性があるのです。
危機の度合いによって「円高」「円安」の動きが変わってくるのです。
1.世界経済が不安定になる状態
→ 円高になる
2.日本が攻撃を受ける、復興は可能な状態
→ 円高になる
3.日本で生きることができないぐらい壊滅的な状態
→ 円安になる
実際問題、北朝鮮が日本に攻撃をしてきたとしても、単発の攻撃の間にアメリカが攻撃して終了させることが想定されるので、3番の可能性はかなり低いものと考えられます。
だとすれば
世界経済の情勢が不安定になるレベルの北朝鮮リスクの場合は「円高」で推移する
と考えるのが妥当ということです。
何事もなければ、徐々に円安に巻き戻されることになります。
まとめ
基本的には
北朝鮮とアメリカが戦争しても
日本にミサイルが着弾しても
「円高」になる可能性が高い
と考えます。
ただし、危機のレベルによっては別のシナリオも考えられます。
日本で生きていくのが難しいほどの壊滅的な状態になった場合には
- 富裕層
- 投資家
- 企業
が自分の資金を海外に逃避させようとする動きにでる可能性も否定できません。この場合は「円安」が進んでしまうのです。
ただし、北朝鮮とアメリカ、日本、韓国の力関係で行けば「円安になるほどの危機は想定できない」というのが現状ではないでしょうか。