2015年7月8日更新
ギリシャのデフォルト危機が迫っています。ギリシャのデフォルトとは何なのか?また、海外FXへの影響はどうなるのか?解説していきます。
そもそも、デフォルトってなに?
デフォルトと言うのは債務不履行のことを言います。貸したお金を返せない状態のことです。これは個人でもカードローンや住宅ローンで返済ができずに破綻してしまえば、金融機関からはデフォルトと言われてしまうのです。
デフォルトは国でも同じように発生するのです。国の運営に置いても、国債を発行して、国民や海外の投資家、金融機関からお金を調達すること自体は決して珍しいことではないからです。
しかし、個人も、国も、同じですが「貸したお金を返せない」ということになれば、信用が失墜してしまうのです。
国の場合は、自国の通貨が下落し、ハイパーインフレが起き、物価が急上昇したうえに、物資が不足することで国民の生活も苦しくなります。失業率も増加し、国民の海外流出も増えてしまうのです。
最近では、アルゼンチンがデフォルトをしています。ギリシャは恒常的なデフォルト状態と言われているのです。
ギリシャがデフォルトになった経緯とは?
ギリシャは長い間、実質的なデフォルト状態にあったのです。
きっかけは、2001年のEU加盟時の粉飾決算にあります。EUは加盟国に対して、名目国内総生産(GDP)比60%以内、毎年の財政赤字もGDP比3%以内という加盟基準を求めていました。
当時のギリシャは名目国内総生産(GDP)比110%とほぼ倍以上オーバーをしていて、参加基準に満たなかったのですが、3年後に迫ったアテネオリンピックなど是が非でもEUに加盟しなければならないという状況にあり、粉飾決算をして(ウソの報告をして)EUに加盟することになったのです。
この事実が発覚したのが2009年のギリシャの政権交代時です。新政権が旧政権の粉飾決算をばらしたのです。このタイミングがリーマンショックと重なってしまい、結局ギリシャは実質的なデフォルト状態に陥ってしまいました。
「国債の50%をチャラにする」などの欧州中央銀行(ECB)からの支援もあり、最悪の自体は防げたのですが、財政の健全化を目指すためにEUの指示のもと緊縮財政を展開していったのです。
緊縮財政というのは、会社でいえば経費カットなので、年金などの社会保障の削減、給料の削減、増税、公共サービスの低下・・・などなど国民の生活はどんどん苦しくなっていったのです。
国民の不満が貯まった状況かで2014年、反緊縮財政を掲げたチプラス氏が政権を取り、首相になったのです。
EU主導の緊縮財政をチプラス首相、ギリシャ政府がやめてしまったことで、お金を貸している側のユーロ圏の国々が融資を実行しないケースが増えてきて、破たん直前まで追い込まれてしまったのです。
2015年7月1日現在の状況とは
7月1日の午前0時、EUによるギリシャへの金融支援が失効しました。同時にギリシャは国際通貨基金(IMF)への融資返済期限を迎えても、返済をしなかったのです。
正確に言えば、現状は返済状態は「債務不履行(デフォルト)」ではなく、「延滞」ということになっています。
今後の分岐点は7月5日の国民投票です。
EUや欧州中央銀行(ECB)の提示する緊縮策をギリシャ国民が受け入れるかどうか?
を国民投票で決めることとなったのです。
「賛成」が多数になった場合には
EUや欧州中央銀行(ECB)を中心に緊急融資が続行され、ギリシャのデフォルト危機は一旦回避することができます。ただし、反緊縮財政を掲げたチプラス氏は退陣を迫られることになります。
「反対」が多数になった場合には
ギリシャがユーロ圏から離脱する、EUから離脱する、目算が高くなります。デフォルトになる可能性が限りなく高くなり、周辺国への影響も避けて通れないのです。EU、ユーロ自身の信頼も揺らぐことになります。
海外FX、為替相場への影響はどうなる?
国民投票で緊縮財政を受け入れない判断になれば
2012年にもギリシャデフォルト懸念が起きているのですが下のグラフを見てみるとユーロ相場は対ドルで下落をすることとになりました。
ユーロ圏内でデフォルトが起きたということはユーロ自体の信用が失墜するという意味もありますが、ギリシャへ融資しているのはユーロ圏の国々ですから、貸し倒れが起き、一時的に大きな損失を書けることになるからです。
欧州中央銀行(ECB)も、ギリシャ国債を担保に大量の資金を融資しているのです。この担保価値すらほとんどなくなってしまう状況下でユーロへの影響も大きくなってしまうのです。
過去の実績の為替変動を見ても、国民投票が「反対」になり、デフォルトが起きてしまえば、一時的とはいえ、ユーロが売られることは想像に難くないでしょう。
緊縮財政を受け入れなければ、ギリシャはEU離脱、ユーロ圏離脱という選択肢を取ることになり、旧通貨のドラクマを復活させることになりますが、ドラクマの価値低下は避けられず、急速なインフレ、物資の不足、企業の倒産、家計の破たんの増加、失業率の急上昇が予測されるのです。
融資している側の影響も避けて通れないのです。
国民投票で緊縮財政を受け入れる判断になれば
欧州中央銀行(ECB)を中心に緊急融資が行われることになります。一時的にデフォルトの危機が回避されることになります。
2012年のギリシャのデフォルト危機のときに「ユーロを守るためならなんでもやる」とドラギ総統が発言した直後に、ユーロは上昇基調にのっていることから見ても、現在続いているユーロ下落がゆるやかに反発して上昇する可能性が高いのです。
海外FX業者の対応は?
一部の海外FX業者では、国民投票の前後のみ、レバレッジを制限する、必要証拠金率を引き上げるなどの措置が行われています。
追証ゼロの海外FX業者は急激な為替変動が予測されるタイミングで、ハイレバレッジトレードをされると多額の損失を被るリスクがあるため、事前にボラティリティが急上昇するケースではレバレッジ制限をかけることがあるのです。
まとめ
7月5日の国民投票が大きな分岐点であることは間違えありません。
しかし、ボラティリティが急激に高くなるということは、ハイレバレッジの海外FXで儲けられるチャンスでもあります。
損失が証拠金に限定される海外FXであれば、どちらかに山をはってハイレバレッジでトレードをすることも賢い方法と言えるでしょう。
7月5日の国民投票の結果
- 反対 61.31%
- 賛成 38.69%
- 投票率 62.5%
とEUの緊縮財政プランへの賛否を問う国民投票の結果、反対票が賛成票を当初の予想よりも大きく上回る結果となりました。
チプラス首相は「有権者は勇気ある選択をした」と勝利宣言をし、「反対票が賛成票を上回ったことは交渉での発言力を増す」として強気な姿勢で EUなどの債権団との交渉にのぞむ姿勢を示しています。
為替はどう動いたかというと「ユーロは一時全面安の展開」となったのです。
しかし、EUの債権団や政府に対して強気の交渉をしていたギリシャのバルファキス財務相の辞任報道が出るとユーロの全面安から反発しました。市場はバルファキス財務相の辞任が債権団との交渉に対してプラスに働くと判断したのです。
しかし、このままEUからの追加融資を受けられなければ
- 7月14日 円建て外債(サムライ債)償還
- 7月20日 ECBが保有する国債償還
乗り越えられず、債務不履行(デフォルト)になる可能性が高いのです。銀行やATMからユーロが枯渇している状況もあるためこれを救うためには自国通貨の発行が避けられない状況であるため、いまだデフォルトの可能性はくすぶっているのです。
ドイツ銀行FX戦略部門グローバル責任者、アラン・ラスキン氏の発言
「起こりうる最悪のケース、特にギリシャのユーロ圏離脱というシナリオはこれまでのところ、それほどユーロへの打撃になっていない。一方で最良のケースである交渉による解決というシナリオもユーロを買う大きな理由ではない。長期的に信頼できる合意達成は困難とみられるからだ」
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)
「ギリシャのユーロ圏離脱の可能性は、しない可能性を上回る」
と専門機関もいまだにユーロ離脱のシナリオを捨てていないのです。
ルファキス財務相の辞任報道で一時は反発したユーロですが、債権団との交渉が不調に終わればユーロ離脱、デフォルトというシナリオも現実的になり、ユーロ安の状況が発生する可能性が高いと考えられるのです。引き続き、細かい要人の発言や報道に注視する必要があります。