海外FXへの影響は?ESMA(欧州証券市場監督局)のCFDレバレッジ制限とバイナリーオプション規制

ESMA(欧州証券市場監督局)のCFDレバレッジ制限とバイナリーオプション規制が2018年8月1日から適用されます。ESMA(欧州証券市場監督局)のCFDレバレッジ制限とバイナリーオプション禁止とは何なのか?海外FXにはどのような影響があるのか?解説します。

ESMA(欧州証券市場監督局)とは?

ESMA(欧州証券市場監督局)とは

欧州連合「EU」における金融監督庁のこと。欧州金融市場の機能を改善するために法規制・監査などを行う組織です。

https://www.esma.europa.eu/

ESMAのウェブサイトには

ESMAは、投資家の保護を強化し、安定した秩序のある金融市場を促進することによって、EUの金融システムの安定性を保護する独立EU加盟機関です。

と書かれています。

  • 日本の金融市場の機能改善を目的として法規制・監査をする機関 → 「金融庁」
  • EUの金融市場の機能改善を目的として法規制・監査をする機関 → 「ESMA(欧州証券市場監督局)」

と考えて良いでしょう。

その、ESMA(欧州証券市場監督局)が今回打ち出したのが「CFDレバレッジ制限とバイナリーオプション規制」です。

ESMA(欧州証券市場監督局)のCFDレバレッジ制限とバイナリーオプション規制

ESMA(欧州証券市場監督局)は、

2018年6月1日のプレスリリースで

欧州証券市場局(ESMA)は、「CFD取引」と「バイナリーオプション取引」の契約を個人投資家に提供するための新しい措置を正式に採択しました。

というアナウンスがされました。これは2018年3月23日に決議されたものです。

バイナリーオプション規制の内容

2018年7月2日より適用

バイナリーオプションのマーケティング、流通または販売を個人投資家に禁止する

CFD取引の内容

CFD取引とは

CFD(Contract For Difference)は、差金決済取引のことを言います。わかりやすく言えば、証拠金にレバレッジをかけて取引をするもの全般を指します。「株式(国内株・海外株・ETFなど)」「株価指数(日経平均・NYダウなど)」「コモディティ・商品(金・原油など)」「債券(国内債券・海外債券)」「外国為替」などが該当します。もちろん、「FX」も「CFD」の一種です。

2018年8月1日より適用

CFDの個人投資家へのマーケティング、流通または販売に関して制限する

その1.レバレッジ規制

商品の種類 ESMA規制後の最大レバレッジ(マージン率)
メジャー通貨ペア(主要FX通貨) 30倍(30:1)
マイナー通貨ペア(マイナーFX通貨) 20倍(20:1)
メジャー株価指数(主要インデックス) 20倍(20:1)
マイナー株価指数(マイナーインデックス) 10倍(10:1)
ゴールド(金) 20倍(20:1)
その他コモディティ 10倍(10:1)
個別株式 5倍(5:1)
仮想通貨(暗号通貨) 2倍(5:1)

その2.ロスカットレベルを50%以上に

強制ロスカットする割合を50%以上に制限する

その3.追証なし

急激な為替変動で、口座がマイナス残高になった場合には、追証を取らずに金融機関側がリスクを負う

その4.ボーナスなどの制限

CFDを取引するために提供されるインセンティブに関する制限

その5.リスク警告

CFDプロバイダーの個人投資家の口座に対する損失の割合を含む、標準化されたリスク警告

ESMA(欧州証券市場監督局)の影響範囲

ESMA(欧州証券市場監督局)は、「EU」の金融監督庁です。

ESMA(欧州証券市場監督局)の規制は、「EU」加盟国に本社機能がある金融機関に対する効力を持ちます。

ESMAのウェブサイトには

MiFIRは、ESMAに一時的な介入措置を3カ月ごとに導入する権限を与えている。3か月が終わる前に、ESMAは製品の介入措置を見直し、さらに3ヶ月延長する必要性を検討する予定です。

https://www.esma.europa.eu/

とあります。

MiFIR(金融商品市場指令)とは

欧州連合(EU)の金融・資本市場の包括的な規制のこと。第2次金融商品市場指令(MiFID2)は、2018年1月から施行されました。

よく、海外FX業者のウェブサイトにも、規制のところに

MiFIR(金融商品市場指令)準拠

というものがあるかと思います。

例:FxProのウェブサイト

MiFID

金融商品市場指令 (MiFID) 2004/39/EC は2007年11月1日に施行され、金融商品マーケットや投資サービス・活動について、ヨーロッパ経済圏 (EEA) 内の規制を行うことを目的としています。キプロスでは2007年にキプロス投資サービスおよび活動および規制市場法により、採択されています(Law 144 (I)/2007).
欧州連合の金融商品市場指令 (MiFID) の主要目的は効率を上げ、金融上の透明性を高め、競争を促進し、有効な消費者保護を敷くことにあります。MiFID はさらに、投資会社がほかの加盟国・第三国で、その会社の認可された範囲内の投資および関連サービスを提供することを認めています。

つまり、

EUに本社がある海外FX業者の場合は、今回のESMA(欧州証券市場監督局)の「レバレッジ規制」に従わなければならない。

ということを意味しています。

各海外FX業者のESMA(欧州証券市場監督局)の「レバレッジ規制」への対応

IronFX

ESMA規定による制限が実行されます
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お客さま各位、

ご連絡させていただいておりますとおり、欧州証券市場局(ESMA)は、先日より、EU加盟国およびEEA各国の金融機関によるリテールクライアントへのCFD提供に関し、新措置を採択しています。

認可・規制を受ける企業として、IronFXは常に規制当局が発行した規則に従ってまいります。
2018年7月30日に発効する重要な規約変更は以下のとおりです。

商品の種類 ESMAによる新マージン
主要FX通貨 30:1
マイナーFX通貨 20:1
主要インデックス 20:1
マイナーインデックス 10:1
20:1
その他コモディティ商品 10:1
個別株式 5:1
仮想通貨 2:1

ロスカット規約

口座毎のロスカット・レベルは50%に設定されます。口座が50%を超えるマージンを維持している場合、影響を受けません。アカウントの残高を確認し、未払いのポジションを維持するために必要な措置を講じることを推奨します。

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FxPro

重要な規制の更新
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お客様へ

欧州証券市場局(ESMA)が発表した新しい措置は、2018年8月1日(水曜日)。 サーバーの時間に影響を与え、(8月1日以降に開かれる新しいポジションに影響を与える)あなたの取引口座のすべてのレベルを中止します。
2018年8月1日以前に開設されたポジションの証拠金要件は影響を受けません。
貴社のトレーディングへの影響を理解するため、ESMAの措置を詳細に説明し、実例を紹介する専用のページをご覧ください。

具体的には、すべてのFxProプラットフォームのストップアウトレベルは次のように変化します。

取引プラットフォーム 8月1日前に中止する 8月1日以降に中止する
FxPro MetaTrader 4 20% 50%
FxPro MetaTrader 5 30% 50%
FxPro cTrader 30% 50%
FxPro Markets 30% 50%

The margin requirements on all FxPro platforms (applicable for Retail clients only) will change as follows:

金融商品 最大レバレッジ
Forex Majors 1:30
Forex Minors 1:20
Gold, Gold oz & Gold gr 1:20
Spot Index Major 1:20
Indices Futures 1:20
Silver 1:10
Commods Futures 1:10
Energy Futures 1:10
Energy Spot 1:10
Spot Index Minor 1:10
US, UK, French & German Shares 1:5

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FXPRIMUS

Attention: Important Regulatory Updates
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Dear Client,

Further to the announcement of the European Securities and Markets Authority (‘’ESMA’’), dated March 27, 2018, new measures will come into effect on Wednesday, August 1, 2018, which will affect the margin close-out levels, as well as the level of leverage available per financial instrument, for retail clients.

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と、一部の海外FX業者では「ESMA(欧州証券市場監督局)」の「レバレッジ規制」への対応をメールやウェブサイトでアナウンスしています。

主要な海外FX業者の対応

XM

→ 変更なし・連絡なし

※日本人顧客の口座を提供する会社は「セーシェル」ライセンスのため、EU圏外であり、今回の規制は対象外

AXIORY

→ 変更なし・連絡なし

※日本人顧客の口座を提供する会社は「ベリーズ諸島」ライセンスのため、EU圏外であり、今回の規制は対象外

FBS

→ 変更なし・連絡なし

※日本人顧客の口座を提供する会社は「バヌアツ」ライセンスのため、EU圏外であり、今回の規制は対象外

TitanFX

→ 変更なし・連絡なし

※日本人顧客の口座を提供する会社は「バヌアツ」ライセンスのため、EU圏外であり、今回の規制は対象外

LAND-FX

→ 2018年7月20日時点で対応の連絡はない。「英国FCA」ライセンスのため、EU圏内であり、今回の規制は対象になる

主要な海外FX業者は、子会社(グループ会社)をEU圏外の国に立ち上げて「ESMA」の規制を回避している!

この決定がなされたのは2018年3月23日ですが、主要な海外FX業者は、それ以前から、日本人顧客の口座をEU圏外の子会社(グループ会社)の口座に移すことで、「ESMA規制」を回避しています。

例えば

XMの場合

XMの本社自体はキプロスにあります。キプロス証券取引委員会(CySEC)の金融ライセンスを持って、長らく日本人顧客へサービス提供をしてきました。

しかし、2016年には既に

XMTrading(エックスエムトレーディング)/キプロスライセンス:EU圏内・レバレッジ規制対象

XM Trading(エックスエム トレーディング)/セーシェルライセンス:EU圏外・レバレッジ規制対象外

へ日本人顧客の移行をはじめたのです。

比較項目 XMTrading(エックスエムトレーディング) XM Trading(エックスエム トレーディング)
運営会社 Trading Point Holdings Ltd(本社) ※1 Trading Point (Seychelles) Limited
所在地 Richard & Verengaria Street, Araouzos Castle Court, 3rd Floor,3042 Limassol, Cyprus F20, 1st Floor, Eden Plaza, Eden Island, Seychelles
ライセンス CySec(キプロス証券取引委員会):120/10 ※2 FSA(セーシェル金融庁): SD010
サポート support@xm.com support@xmtrading.com
口座開設ボーナス なし あり(日本語版に限り30ドルボーナス)
入金ボーナス なし あり(入金額に応じて最大5,000ドル)
取引ボーナス あり(取引量に応じて最大5,000ドル) なし
日本語サポート なし あり
最大レバレッジ 1,000倍 1,000倍
取扱銘柄 FX57通貨ペア、CFD33銘柄、貴金属4銘柄 FX57通貨ペア、CFD33銘柄、貴金属4銘柄

当時から、今回の決定を正確に見越していたわけではないと思いますが、規制に対する世界的な動きというのは、あらかじめ感づいていたのだと思われます。

セーシェルライセンスの「XM Trading」に口座を持ったとしても、実際にFXサービスを提供しているのはキプロスにある本社ですので、サービスレベル自体は何も変わりません。多少、ボーナスなどが日本人顧客向けになっているぐらいです。

セーシェルライセンスの「XM Trading」を運営するTrading Point (Seychelles) Limitedは、あくまでも、規制回避のためのグループ会社という位置付けになっています。

日本人顧客の売上が大きい海外FX業者ほど

EU圏外の国にグループ会社を持ち、EU圏内に影響する「ESMA」の規制を回避している

のです。

つまり、

日本人の海外FX投資家にとっては、一部の海外FX業者を除いて、今回の「ESMA」のレバレッジ規制は影響がない

と言っていいでしょう。

今後の海外FX業者選びで重要なポイント

金融ライセンスの差がなくなってくる!

今までは、

  • 英国「FCA」
  • キプロス証券取引委員会「CySEC」

などは、信頼性の高い金融ライセンスとして、海外FX業者を比較検討するときの重要な判断ポイントになってきました。

しかし、今回のような規制の動きが世界中で広まると・・・

レバレッジ規制を受けないハイレバレッジトレードが可能な海外FX業者というのは

  • セーシェル
  • セントビンセント及びグレナディーン諸島
  • バヌアツ
  • ベリーズ
    ・・・

などの金融ライセンスとしては信頼性の低い国々に集まってきます。そうせざるを得ないということです。

金融ライセンスの差が以前よりもなくなってしまうため、海外FX業者の比較検討が難しい状況になるのです。

今後、海外FX業者の信頼性を比較する上での重要なポイントは

  1. 日本人顧客へのサービス提供歴
  2. 親会社の保有する金融ライセンス
  3. 顧客数・社員数・日本人スタッフ数・世界の拠点数などの規模感

が重要になってきます。

比較検討のポイントを間違えない必要があるのです。

まとめ

ESMA(欧州証券市場監督局)のCFDレバレッジ制限とバイナリーオプション規制とは

  • EU圏内の海外FX業者に対する、レバレッジを最大30倍に下げる規制のこと

を言います。

それ以外にも

  1. ロスカットレベル50%以上
  2. 追証なし
  3. インセンティブ禁止
  4. バイナリーオプション禁止
  5. 顧客への警告

などの規制が行われます。

海外FX業者への影響は

ほとんどない

と言っていいでしょう。

一部の海外FX業者は、ESMAの規制に対応しましたが、ほとんどの海外FX業者は、この決定を見越して、EU圏外の国に子会社を設立し、ESMAの規制対象外で日本人顧客が海外FXを利用できる環境を整えています。

仮に今回のESMA規制でレバレッジが下げられる海外FX業者を利用していた場合は、EU圏外の国に会社を持つ海外FX業者の口座に移行すれば良いだけです。大きな問題にはなりません。

ただし、今後は、海外FX業者の金融ライセンスがEU圏外の国に集中してしまうため、金融ライセンスの信頼性での比較がしにくい状況となります。

今後の海外FX業者の信頼性を比較する上では

  1. 日本人顧客へのサービス提供歴
  2. 親会社の保有する金融ライセンス
  3. 顧客数・社員数・日本人スタッフ数・世界の拠点数などの規模感

が重要になると考えましょう。

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