2月5日「米株市場ではダウ平均が一時1500ドルを超える大幅な下げ」を記録しました。
と思っていたら
2月16日「一時105.54円まで売られ、2016年11月10日以来、1年3カ月ぶり円高水準」を記録しました。
これはどのような現象になっているのか?よくわからないという方も多いかと思います。今後の為替予想を考えています。
NYダウ暴落の理由
NYダウの推移
見ての通り、直近半年間で22,000ドルから1月末には26,600ドルを超えたと思ったら、2月9日ダウは23,360ドルと大幅な暴落を記録しています。
NYダウ暴落の理由のきっかけは2つ
「米国雇用統計」
1月の米国雇用統計は
市場予想:18万人
結果:20万人(+2万人)
と、市場予想を超える伸びを見せました。
「米連邦準備制度理事会(FRB)の新議長パウエル氏就任」
ジェローム・パウエルFRB理事は2月5日、イエメン議長の後を受けてFRBの第16代議長に宣誓就任しました。
「米国雇用統計」が大きな影響を及ぼしてたとは考えにくい!
「米国雇用統計」の市場予想と結果の乖離幅は、チャートを見ればわかる通りでとくに大きかったわけではありません。
2017年11月
市場予想:19.5万人
結果:22.8万人(+2.3万人)
と、11月と比較しても、同じぐらいのレベルなのです。
「米国雇用統計」だけの問題で、NYダウが暴落したとは到底思えないのです。
大きな要因は「米連邦準備制度理事会(FRB)の新議長パウエル氏就任」
投資家から見ると
「パウエル氏がどういう利上げ方針を持っているのか?」
わからない(実績がない)から不安
というのが本音ではないでしょうか。
イエメン氏の就任前後のNYダウを見てみると
2014年2月3日:イエメン氏就任
前日比:-2.08%
を記録しています。
2018年2月17日:パウエル氏就任
前日比:-4.60%
です。
結局、「どんな方針を取るのか?」がわからないから、新しいFRB議長が就任するとNYダウが警戒感から売られる
というのが一種のアノマリーになっています。
これに加えて
- 「米国雇用統計」が市場予想よりも良いことに起因する「利上げ」警戒
- トランプ減税による「歳出拡大」
- 上昇を続けてきたNYダウの利益確定「売り」
- 下げ幅が一定額を超えたことに起因する自動売買などの「売り」
などが複合的に連鎖し「NYダウ暴落が発生した。」と考えられるのです。
その後は6日連続で続伸しているのですから、
「パウエル氏就任」+「米国の景気が加熱しすぎるリスク懸念」
の合わせ技で、一時的にNYダウが暴落したと考えて良いでしょう。
じゃあ、なぜ、円高になってしまったのか?
通常の動きは
株高 → 投資家のマネーは通貨から株へ動く → 円が売られる → 円安
確かにNYダウの暴落に引っ張られて、日経平均も大幅下げを記録しました。
しかし、そこからNYダウは6日連続の上昇を記録し、日経平均も下げ止まっています。
なのに「円高」が止まらない。
という現象が発生しています。
円高が止まらない理由
「円高」というよりは「ドル安」
- 円は、対ドル以外の通貨に対しては、それほど上昇圧力がかかっていない。
- ドルは、全面安の展開。
- 安全資産である「スイスフラン」や「金」と比較しても「日本円」の上昇率が高い。
ことから考えると・・・
発生している現象は
「円高」ではなく、「ドル安」です。
「ドル安」になっている理由は
- 雇用統計から米国の景気が絶好調なのは間違えない。
- これにトランプ減税(連邦法人税率は2018年に35%から21%に引き下げ)の燃料が投下される
→ 景気は過熱しすぎる
その結果として
利上げペースが加速するのであれば、米国の企業業績にマイナスの影響を与えるのではないか?
という懸念からの「ドル売り」です。
これには
- トランプ減税による米国財政赤字の拡大(10年間で170兆円)
というリスク要因も含まれていると考えられています。
FXへの影響と今後の為替予想
円高は進まない!
NYダウの動きを見ても
暴落は一時的な投資家心理の「不安」に起因したもの
であると言えます。
これに自動売買的なアルゴリズムでの「売り」が追従した結果、暴落という形になっていますが
結局、その後は6日連続で続伸と持ち直しているのです。
「ドル売り」の動きも、投資家の警戒感が薄らいで、徐々に収まってくると考えるのが妥当です。
日銀の黒田総裁の続投が決定
2月16日、日本銀行の黒田東彦総裁を再任させる人事案を国会に提示した。
つまり、黒田さんが続投するということは
今までの金融緩和を「政府・与党」としては評価しているということです。
この流れに水を差すわけにはいきません。
金融緩和を弱めるような動きが少しでもあれば、一気に株は暴落し、円高が進むことが目に見えています。
黒田さん自身も、政府与党も、自分でやったことを否定することはできず
今まで通りの金融緩和を続ける
しか、「打つ手はない」と言っても過言ではありません。
だとすると・・・
株安を誘発する円高は、是が非でも回避しなければなりません。背に腹は代えられないのです。
日銀は、すでにETFも、国債も、買いまくってしまっているのですから、「株安」「金利上昇」は耐えられる状況ではないのです。
介入したとしても、円安誘導に力を入れるのは想像に難くありません。
だとすれば、105円の円高というのは一時的なものであり、これ以上円高が加速するとは考えいにくいのです。
注意しなければならないのは
- 日銀のETF保有率は、2017年10月時点で「74%超」
- 日銀の国債保有率は、2017年9月時点で「40%超」
ですから、「ずっと買い続けられるものでもない」ということです。
日銀が弱気の姿勢を見せた瞬間に、外国人投資家の「日本株」のマネーがリスクオフの「日本円」に向かったとしても、全くおかしくありません。
- 日本株の暴落
- 急激な円高
- デフレ再発
ということも、考えられるということです。
日銀が国債やETFを買い続けるのは、2018年いっぱいは可能だと思われますが、2019年以降はいつ崩れてもおかしくない状態になるはずです。
- 2018年の間は「円高はこれ以上は進まない」
- 2019年に向けて「急激な円高が発生するリスクがある」
と考えます。
「米国の動き」と「日銀の動き」には、引き続き注視しておく必要があります。