中国経済の悪化が表面化したことによって、中国株の株価暴落が止まりません。連日のように下げ幅を更新していますが、これは中国国内での影響ではなく、そこから波及して世界同時株安の状態になっているのです。当然、株式市場と為替市場は切っても切り離せない関係にあるため、FXへの影響も少なくないのです。株価の変動が大きくなるタイミングでは、デイトレードやスキャルピングトレード派の方も経済動向を無視するわけにはいかないのです。
ここでは、中国経済悪化とFXへの影響、今後の動向について丁寧に解説します。
2015年最安値更新。急落する中国株
代表的な株価指数である上海総合指数が2015年の最安値を更新しました。
上海総合指数 日足(過去1年)
8月26日時点2,964
中国株暴落の背景
中国成長の鈍化
中国国家統計局は7月15日に今年1~6月期GDP成長率を発表しました。
前年同期比7.0%増
という結果でした。「今年の政府目標である「7%前後」の成長を維持した。」という発表でしたが、外国人投資家でこの指標を信じる人はほとんどいません。
そもそも、2014年末から2015年6月まで4回もの利下げを繰り返している事実は、政府自身が景気が失速する局面であることを理解している証明に他ならないのです。
首相もGDP成長率は重視しておらず、中国経済の実態値に近いと考えられている
- 銀行の中長期貸出残高
- 電力消費量
- 鉄道貨物輸送量
の3つの指標の成長率を見ているのです。しかし、この3つの指標を掛け合わせた指数「李克強指数」は、みずほ総合研究所によると2015年7月では前年同月比0.3%増とほぼ横ばいの数値となっているのです。実際のGDP成長率は5%とも見られており、2010年までは10%を超えるGDP成長を誇った中国経済も、確実に減退していることがわかっているのです。
他の指標でも
- 7月の新車販売台数は7.1%減少
- 7月の粗鋼生産も4.6%減少
と悪い結果が続いています。
決定打はさらなる利下げ
中国政府の発表通り、期待したGDP成長率で経済が維持されているのであれば、利下げの必要はないのですが、中国人民銀行(中央銀行)は人民元の切り下げを8月11日に行いました。
外国人投資家はこれを受けて
と景気後退を証明する材料になってしまったのです。
中国だけで止まら得ない影響は、世界同時株安へ波及
10億人以上の人口がある中国経済の悪化は、中国国内に留まりません。
- 中国人の景気減速によって原油価格などの下落が予想される先物市場から崩壊が始まります。
- ブラジル、マレーシア、韓国など中国との経済依存度が高い国も同時に経済へ悪影響がでます。
- 外国人投資家は中国が危ないなら、アジアの株式も危ない・・・と考え合わせ売りで資産逃避が起きます。
・・・
このような負の連鎖が色々なところで発生し、結果として世界同時株安という状態を引き起こしてしまっているのです。
日本株も例外ではありません。
8月25日時点の終値で日経平均株価は17,806円まで下落
日経平均株価
中国から逃げ出した資産は安全資産である円に流れるため、円高が加速します。円高が加速すれば輸出企業の経営が悪化するため、株価も下がります。これを予測し、多くの売りが入ってしまうのです。
元々、日本政府の手動で推し進められた日本株高なので、このような突発的な事象で揺らぐ可能性は非常に高かったのです。
- 主要国株価は軒並み4%超下落
- 原油や銅などコモディティ価格も大幅に下落
- NZドル、豪ドルなどのコモディティ通貨が5%超下落
・・・
とこの現象は日本だけでなく、世界中で起こっているのです。
為替市場への影響はリスクオフによる円高に
リスクオフというのは、単純に安全資産への資本の移行を意味します。
安全資産というのは、円・ユーロ・ポイド・金・銀などの不況にも強いと言われているものです。結果的に円安が続いていた日本円も、久しぶりに円高が進み、8月25日には116円の水準まで上がったのです。
中国当局は8月26日からの一時的な利下げを発表
ついに中国当局が追加緩和策に動きました。これ以上の中国株安は国民の不安を呼びかねないと腰の重かった中国当局もやっと動いたという印象です。
- 8月26日から預金・貸し出しの基準金利(1年物の預金金利で2%、貸出金利で4.85%)を0.25%幅下げ
- 9月6日から金融機関から強制的にお金を預かる預金準備率(大手銀行で18/5%)も0.5%幅引き下げ
を行うと発表しました。
この発表が一時的な安心材料になり、欧米諸国の株価は3%~5%上昇に転じました。
円高傾向も、119円前後で一時的に小康状態に入ったようです。
今後はどうなるのでしょうか?
中国経済悪化と為替市場の今後の動向
円高傾向は続く可能性が高い
どれだけ中国政府が買い支えても、実態の経済が悪化している状態を簡単に止められるとは思えません。それほど実体経済は不動産バブルの崩壊なども相まって深刻な状態になっていることが予測されます。
利下げを繰り返したとしても、一時的なカンフル剤効果でしかなく、中国からの外国人投資家の資本逃避というのは避けられないと考えられます。
このリスクオフによる資金流入の流入先は
- 円・ユーロ・ポンド
- 金・銀
であることはまちがえないでしょう。
ただし、利上げを控えたアメリカ経済も好調なので、米/ドルの推移というのは微妙な判断を迫られます。
どちらの圧力が強くなるのか?状況を見極める必要があるでしょう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏は「中国の景気減速懸念から、投資マネーの逆流が世界的に起きている。株式市場は、しばらく荒い値動きが続く」と見ています。
株式市場で荒い値動きが続くのであれば、FXでもレートの乱高下が続くと言えるでしょう。デイトレード派やスキャルピングトレード派には格好の稼ぎ時とも言えますが、テクニカル分析が通用しないほどの状況になりえるため、ファンダメンタルズの状況も頭に入れておく必要があるのです。