イギリスのEU離脱騒動(ブレグジット)の期日が6月23日に迫ってきました。海外FX業者もスプレッドが広がるアナウンスをしはじめました。今回は英国イギリスのEU離脱騒動によるFXの影響について解説します。
英国イギリスのEU離脱騒動(ブレグジット)とは?
イギリスがEUを離脱することを表す造語のことです。
英国イギリスのEU離脱騒動(ブレグジット)が起きた背景
2000年代から急増した移民に対する反発
2000年代の当時のブレア首相が主導する政策では、EUの新規加盟国の中東や東欧の移民を受け入れる政策を取っていました。
しかし、2008年のリーマン・ショックを契機としてイギリス国内では企業のリストラ・人員整理が進み、失業者が増えてしまったのです。
どの国でも起こるのですが、移民受け入れによって失業者が増えると「移民なんて受け入れるからだ!」「あいつらに職を奪われた。」と不満が拡大していくのです。これによりデモや暴動も頻発するようになりました。
英国イギリスのEU離脱騒動(ブレグジット)による影響は?
EU・ユーロへの影響
イギリスは、EU第2位の経済力と高い軍事力を持つ国です。また、ドイツ、フランスに次ぐ3番目の出資国でもあるのです。平均年間92億3千万ユーロを負担しています。
- アメリカやアジアとの力関係の中でのEUの存在感が弱まる
- EUの予算が減る
- EUの予算の不足分を別の補助金などで補てんしなければならない
当然、これらの状況からイギリスのEU離脱が決定すれば「ユーロ安に動く」と考えられています。
仮にEU残留となっても、イギリス残留のためにイギリスに有利な条件になる可能性が高く、一時的にはユーロ高に動くと考えられますが、他のEU加盟国は面白くない部分もでてきます。一概にユーロ高になるとも言い切れない不穏な状況が続くと考えられます。
イギリス・ポンドへの影響
イギリス財務省によると
EU離脱の場合
- 国内総生産(GDP)は残留した場合と比べて2030年までに3.4%から9.5%の低下
- 最悪シナリオでポンドが15%押し下げられる
と予測しています。
EUを離脱すれば、EU加盟国との貿易で重い関税がかけられることになります。輸出に悪影響があるのは言うまでもありません。また、金融ライセンスの問題など、EUに加盟していたことで、EU加盟国とのビジネスがスムーズにできていたものがなくなるというデメリットはそれなりに大きいということをイギリス財務省が公表しているのです。
当然、「ポンド安に動く」と考えられています。どのくらいポンドが急落するのか?は予測がつきません。
日本・円への影響
すでに6月13日のユーロ/円では3年2か月ぶりの円高水準になっています。
困った時の安全資産「円」の登場です。
6月15日時点のユーロ/円
6月15日時点のポンド/円
単純に考えれば
EU離脱 → 円高
EU残留 → 円安
ですが、そうは単純ではないでしょう。あくまでも「市場の見込みに対しての結果がどうなるか?」で円高に振れるのか、円安になるのかが決まってきます。
現状の国民投票の見込み
6月10日(金)に発表された世論調査
EU(欧州連合)残留 45%
EU(欧州連合)離脱 55%
海外FX業者は事前にレバレッジを制限するなどの動きがある!
XMTrading(エックスエムトレーディング)
対処:レバレッジ制限
期間:追って報告
不透明な市場の動き からお客様及び当社を保護する観点より、XMは、国民投票の日およびその前後は一時的に全ての金融商品の必要証拠金を引きあげる予定です。 必要証拠金の変更に関する詳細は、日が近くなりましたら改めてメールを差し上げます。
AXIORY
対処:レバレッジ制限
期間:2016年6月20日(月曜日)~2016年6月24日(金曜日)マーケットクローズまで
特定の通貨ペア(EUR, GBP, CHF, CZK, PLN, HUF, DKK) 並びに全てのCFD商品
→お客様の口座設定レバレッジの5分の1 (400倍の場合は最大80倍、200倍の場合は最大40倍等)
LAND-FX
対処:レバレッジ制限
期間:NY時刻基準6月15日00:00から
レバレッジは2%の証拠金が必要な50:1の設定に変更
TitanFX
対処:レバレッジ制限
期間:2016年6月20日(月)から6月24日(金)の間
全GBPペアのレバレッジを、2016年6月20日(月)から6月24日(金)の間、一時的に最大100倍*に引き下げさせて頂きます。
ほとんどの海外FX業者では国民投票の期間中(期間前と期間後も含む)はレバレッジを50倍~100倍程度に引き下げるようです。
日本国内のFX業者でも「投票結果だけでなく事前報道でも為替相場が激しく反応する可能性があり、持ち高の調整や資金管理に十分に注意してほしい」とアナウンスするFX業者が増えています。
まとめ
イギリスのEU離脱騒動(ブレグジット)は離脱しようが、残留しようが、世界経済に対して影響が大きいこと、為替レートは高いボラティリティで動くことは確実だと考えられます。
FX投資家にとってはリスクもありますが、大きなチャンスでもあります。どういう戦略で挑むのかは早めに決定しておきましょう。
追記:英国イギリスの欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の結果
6月23日 国民投票の結果
離脱 51.8%
残留 48.2%
当初の予想通り
円高/ドル安
円高/ポンド安
円高/ユーロ安
と安全資産である「円」が買われて、EU離脱の影響がイギリスとEUどちらにもマイナス影響があると考えられて、「ポンド安」「ユーロ安」に動きました。
米ドル/円
ユーロ/円
ポンド/円
当然のように円高の影響は株価には波及しています。株価は週明けさらに下げる可能性が高くなっています。
英国イギリスの欧州連合(EU)離脱って今後どうなるの?FX・為替の影響は?
スケジュール
2016年6月23日 国民投票
2年間かけて・・・
EU離脱協定締結
- 欧州委員会による提案
- 欧州議会による同意
- EU理事会にて可決
EU新協定の締結
- 欧州委員会による提案
- 欧州議会による同意
- EU理事会にて可決
- 各国議会による批准
2018年6月 EU離脱交渉期限(全28ヵ国の同意で期限延長)
2023年~ 他国とのFTA交渉終了
今後の焦点は「どのくらい離脱するのか?」
EUを離脱したからと言って、完全にEUとの関係を終わらせるわけにはいきません。「どの程度離れるのか?」を2年間協議を重ねて決めていくというスタンスになります。
みずほ総研のレポートによれば、ヒト・モノ(サービス)・カネの自由市場への参加度合い、EU法の影響度合い、EUへの予算参加などの要素によって色々な協定のスタイルがありうるとなっています。
「完全に決別する方法」もあれば「ほぼEU加盟時と変わらないじゃん。」という形も新協定次第ではありうるということです。
出典:みずほ総研のレポート
EUのダメージがリーマンショック級になる可能性あり!
スイスフランショックなどとは違って、今回のはある程度事前に何が起こるのか?は予測されていたものです。
そのため、相場の急変動と言っても、ある意味織り込み済みの部分もあったのですが・・・
今後の為替相場を予想するときに重要なのは「EUの崩壊」ではないでしょうか?
ドイツなどのお金持ちの国にとってみれば、EUへ予算を出して、貧しい国のために使われる、移民などのマイナスの遺産を背負わされるのは・・・面白い話ではないのです。
国民感情は貧しい人を救う道徳的なものよりも、自分の懐具合への影響が勝ってしまうため、今回の英国のEU離脱の影響というのは・・・実は計り知れないほど大きいように思います。
お金持ちの国の国民は
- 「うちでも国民投票しよう。移民のせいで自分が損をするのは嫌だ。」
- 「国民投票をマニュフェストに盛り込む議員を当選させよう。」
- 「当選するためには国民投票をマニュフェストに入れよう。」
と、どんどん同じような事例が出てくる可能性があるのです。
日本国民だって、消費税増税を国民投票したら・・・増税拒否になるでしょう。自分へのメリットを重視してしまうためです。国民投票というのは国民の意見を反映できる良いツールでもあるとともに、「国民が決めたんだから。」という言い訳とともに国のメリットとは違う方向に動く可能性がある、危険なツールでもあるのです。
長い目で見るとユーロ安に傾倒していく可能性があるということです。
それを回避するためには「EUが離脱後の英国をどう扱うか?」にかかっていると思います。
欧州を中心に今後も為替が不安定な状況が続くかと思います。
今回の英国のEU離脱による追証額は追ってレポートしますが、為替が不安定なときことそ、追証リスクがない海外FXを試してみてはいかがでしょうか。