2016年はいきなり日本株が年明け5日続落という波乱のマーケットとして日本経済スタートしました。ご存知の通りで日本株安というのは結果の一つでしかなく、基本的には中国株の大暴落が発端であり、世界同時株安が引き起ったのです。さらに中東情勢も不安定で、リスクマネーが日本円に流れた結果、円高/ドル安に振れ、日本株もさらに下がるという展開になっています。
年始早々の起こっている事象と今後の展望を解説します。
中国株の暴落の概要
中国の実体経済が落ち込んでいるというのは、昨年からわかっていたことであり、そのことが中国株の暴落につながったわけではありません。
1月8日(金)に中国株「売り禁止」解除
が発端となっています。
中国証券監督管理委員会(CSPR)が2015年7月8日に持ち株が5%以上の株主を対象に向こう6月間、株式売却を禁止する措置を発表したのです。
中国株の下げが止まらない中で、中国政府が矢継ぎ早に行った、株価支援策の一つでした。
これが投資家心理をマイナスに作用させる一因となっているのです。
自分の資産が凍結され、売れずに資産が目減りしていく一方、しかも、他の市場に再投資することもできない。
「こんな状態が続く市場は投資家としては今後一切関わりたくない。」
と思うのが当然です。
そのため、1月8日(金)の中国株「売り禁止」解除を前に中国CSI300指数、上海総合指数が大暴落し、今年から導入されたサーキットブレーカーが発動したのです。
中国CSI300指数 日足
上海総合指数 日足
上海株式市場では1月4日に続き、1月7日もサーキットブレーカーが適用されたのです。4営業日中2営業日で発動される「異常事態」でパニック売りが加速しました。
結果、導入したばかりのサーキットブレーカー制度を、停止することが発表されました。
さらに中央銀行の中国人民銀行が通貨・人民元の基準値を引き下げたことで、人民元安がすすみ、これも人民元安誘導を意図したものと市場では受け取られたのです。
中国株の急落は起こるべくして起きたものと言えるでしょう。
中国株安以外にもリスク要因が満載
中東情勢の緊迫化
サウジアラビアがシーア派の指導者を公開処刑しました。このことが要因でシーア派のイランが反発することになったのです。
イラン国内のサウジ大使館襲撃が起こり、サウジアラビアとイランの国交を断絶しました。さらにサウジアラビアに続いて、バーレーン、スーダンなどがイランとの国交を断絶しました。
日本ではそれほど報道がされていませんが、米国やロシアなど国際社会が緊張緩和に向け、相次いで仲介に乗り出す異常事態になっているのです。
北朝鮮の原爆実験
日本では連日報道されていますが、北朝鮮が4回目の核実験を行いました。6日には北朝鮮政府の声明として、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の命令により「初めての水爆実験に成功した」と発表しているのです。
これはアメリカに対する交渉カードを作るためという見方が一般的ですが、6か国協議を主導していた中国の静止も無視しての強硬に緊張状態は高まったと考えられているのです。
より高度な水爆の実験というのは懐疑的という見方が多くありますが、爆弾の小型化にしていれば世界的なリスクが高まったとも言えるのです。
原油安が本格化
世界的景気の低迷で原油需要というのは落ち込んでいるのが現状です。しかし、各国は見込んでいた売上を達成しようとして、原油価格の落ち込み分を供給量を引き上げてしまったのです。
供給過多にになればさらに原油安が進みます。OPEC(石油輸出国機構)の需給調整も全く効かないようになっている現状では、連鎖的な石油メジャーの倒産、石油関連企業の倒産が増加し、信用リスクの高まりが株式市場を圧迫してしまうのです。原油安が続くと米株安につながり、当然のように日本株が下落するのです。
米国では、複雑な金融商品にも組み込まれていることから、「第2のリーマンショック」と警鐘を鳴らす専門家も少なくありません。
WTI原油チャート 原油価格 月足
年初はリスクオフマーケットで円高に
前述したような中国株安を発端とした様々なリスク要因は安全資産への資本の移行を誘発します。
安全資産である「円」は急騰し、一時1ドル=116円台まで突入しているのです。
リスクオフによる円高は一時的なものと考えられますが、それ以外にも2016年は円安が終了し、円高に振れるサインが多くみられるのです。
米ドル/円 日足
アメリカの利上げはドル安/円高要因
12月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で米国連邦準備鮮度理事会(FRB)はアメリカの政策金利を0.25%引上げ、0.50%とすることを決定しました。
8年継続してきたゼロ金利政策を解除したのです。
政策金利(フェデラルファンズ・レート)は、この引き上げで終了ではなく、年々引き上げが起こると予測されています。
FRBの政策金利の推移予想
元々、「インフレがFRBのターゲットである2%へ向けて、着実にその方向へ歩み始めたという見極めがつき次第、利上げする」と話していた通りで、インフレが見えてきたから、利上げをしたのです。
ドルがインフレになるということは、ドル安が進む可能性が高いことを意味します。
過去の金利引上げとドル円の推移を見ても
利上げ後は、ドル安が進む形になっています。「米利上げ後はドル安」が経験則なのです。
他にも円高要因が多い
日本の貿易黒字の拡大
2014年の黒字:2.6兆円
2015年の黒字:17兆円程度
と大幅に日本の貿易収支は今年著しく改善し、経常黒字の大幅増加が進んでいるのです。
黒字拡大の最大要因は原油価格下落による貿易収支の大幅改善です。貿易収支の改善は日本にとって外貨余剰につながり、円高要因となるのです。
最大の円安要因である機関投資家の対外投資に陰り
日銀が追加量的緩和を実行してから、機関投資家の資金がだぶつき、機関投資家はその投資先を海外の株式や債券に求めたのです。これが円安が進んだ大きな要因なのですが、円安が進みすぎてしまい、対外投資環境がそれほど良い状況ではなくなってきたのです。
その上で、前述したような円高要因が多く発生し、今後の円高が予測される状態になれば、機関投資家による対外資産の売却、ドル売りが増える可能性が高いのです。当然、さらに円高は進みます。
日本政府も円安を警戒している?
これ以上円安が進めば、賃金が上昇する前に食料品価格の上昇、物価上昇が早まり、景気が冷え込むことを日本政府も危惧する段階にきているのです。
対抗要因は日銀の金融緩和
円高が進めば企業の業績も悪化し、日本株も下がることになります。賃金を上げる前に企業の業績が悪化したのでは、アベノミクス自体が成立しません。
円安・株高を誘発する日銀の追加金融緩和は、早めに実行される可能性は高いと考えられます。
しかし、日銀の金融緩和自体が限界にきていることや、一時的なカンフル剤にしかならないことから、長期的な円高には対抗できないと考えるアナリストの方が多いのです。
今後の展開を予想
2016年は円高で推移する可能性が高い!
- リスクオフによる資金移動
- アメリカ利上げのドル安
- 日本の貿易黒字の拡大による外貨余剰
- 機関投資家の対外資産の売却、ドル売り
・・・
と「これだけ円高要因がそろうか?」というぐらい2016年は円高になる可能性が高いと考えるのです。
これに対抗できるのは、円安・株高を誘発する日銀の金融緩和ぐらいですが、一時的な効力しか持たないでしょう。
短期トレードを中心とする投資家も、世界的に色々なリスク要因が頻発しているので、マーケット情報はつぶさにとらえておくべきでしょう。