海外FX業者は「NDD(ノン・ディーリング・デスク)」、国内FX業者は呑み取引の「DD(ディーリング・デスク)」というお話はこのサイトでは至る所で解説しています。今回は国内FX業者は呑み取引の「DD(ディーリング・デスク)」におけるカバー取引の実態について解説します。
国内FX業者のカバー取引とは?
国内FX業者の取引方法
国内FX業者は、相対取引(店頭取引・OTC)が主流となっています。
顧客が注文した取引を実際には売買せずに、国内FX業者が胴元として「呑む」形の取引方法です。
「1ドル=100円」で1万通貨の買いの発注をしたとしても、国内FX業者は何もしないのです。海外FX業者は実際に1万ドルを100万円で買うのです。
国内FX業者の場合
- 「1ドル=100円」 → 「1ドル=101円」で決済 +1万円の利益
を顧客が出した段階で、1万円を国内FX業者が支払うだけという仕組みです。
- 「1ドル=100円」 → 「1ドル=99円」で決済 1万円の損失
の場合は、何もせずに「1万円儲かった。ラッキー」と考えるのが国内FX業者です。
これが相対取引(店頭取引・OTC)の仕組みです。
国内FX業者のカバー取引とは
「顧客の注文のすべてを呑むのはリスクが大きい。」と考える国内FX業者もあります。
投資家が勝ちまくったら、相対取引(店頭取引・OTC)の場合は国内FX業者が丸ごと損失を抱えることになるからです。
そこで、一部の顧客の注文を、そのままカバー先(銀行、証券会社、他のFX会社)に対して注文し、リスクをヘッジするのです。同じ注文をしているのでこのときのFX業者の利益は薄利になります。
これがカバー取引です。
カバー取引を行う背景には「国内FX業者の自己資本比率の規制」も要因のひとつとなっています。
国内FX業者のカバー取引の実態「スプレッドとカバー率は反比例の関係にある」
国内FX業者のカバー取引と取引コストの関係は
カバー取引をしない = すべての取引を「呑む」 → 取引コストが発生しない
カバー取引をする → 取引コストが発生する = 利益はほぼなくなる
となります。カバー取引をしない場合には、何もすることがありませんので、取引の為替手数料や取引をする人件費などのコストが一切かからないことになります。
取引を実際にはしないのですから、取引によるコスト発生がないので・・・スプレッドは自由に決められます。
カバー取引をしない場合は、そもそも、スプレッドなんて発生していないのですから、当然です。
一方で、カバー取引をする場合には取引コストが発生するので、スプレッドで顧客からそのコスト分を回収しなければなりません。
結果として下記のような関係が成り立ちます。
カバー取引とスプレッド(米ドル/円)の相関関係とカバー取引先数
出典:金融庁 金融モニタリングレポート2015年7月
カバー率が低い → スプレッドが狭い
カバー率が高い → スプレッドが広い
0.5pips以下の国内FX業者の場合は、カバー率は5%~20%ですから、ほとんどの注文を「呑んでいる」ことになります。
一方で国内FX業者でもフルカバーをしている業者は0.5pips~1.0pipsとスプレッドが広く、「NDD(ノン・ディーリング・デスク)」の海外FX業者と変わらないスプレッドでサービス提供をしているのです。
スプレッドが狭い国内FX業者ほど、カバー取引をほとんどしないで全額呑む
ということがデータからも実証されています。
負ける顧客が重宝される仕組み
国内FX業者の場合は「負ける顧客」が重宝されます。
- 顧客が負ける → FX業者が儲かる
- 顧客が勝つ → FX業者が損をする
という仕組みですから、「とにかく負けてくれ。」「負ける顧客を増やせ。」というのが狭いスプレッドの国内FX業者の心情です。
国内FX業者の立場になって収益を最大化するために考えるのは
- 負ける顧客 → カバーをする必要がない → 丸呑みで対応
- 勝つ顧客 → カバーしないと損をしてしまう → カバー取引で対応
という「投資家のトレード能力によって、カバーするかどうか?」を決めるという投資家別のカバー対応です。
実際に多くの国内FX業者では、トレード成績に応じたカバー取引の判断をプログラムで行っているのです。
- 過去のトレード履歴
- 顧客のトレードスタンス(短期売買、長期売買、デイトレード、スキャルピング)
- 残高の伸び
- 過去のトレード勝率
- 過去のトレードの儲け額
などの情報をプログラムによって、データベース化したうえで
「負ける顧客」 or 「勝つ顧客」
かを分類するのです。
これを持って、カバー取引を
- フルオート
- セミオート
- マニュアル
といった、分類で実行するのです。
「勝つ顧客」に対しては、マニュアルによってトレードごとにカバー取引の有無を判断するケースが多いようです。
「負ける顧客」に対しては、フルオートで全額呑み取引でほっとけばFX業者が儲かるという仕組みとなっています。
国内FX業者の相対取引(店頭取引・OTC)はこんなことを毎回しているのですから、カバー取引の条件が合わなかったり、国内FX業者の保有ポジションの偏りが大きくなる場合に約定拒否「リクオート」が発生してしまうのです。
カバー取引にはネッティングやディレイのカバー取引もある
カバー取引をする国内FX業者の場合「ネッティング」や「ディレイのカバー取引」というやり方を実行しているところがあります。
ネッティング(マリー)
顧客同士の注文を相殺すること。相殺すればカバー取引をする必要がない
ディレイのカバー取引
顧客の注文ごとにカバー取引をすると、細かい為替手数料がカバー先との間に発生してしまうので、ある程度顧客の注文がまとまった段階でカバー取引をする
国内FX業者は常に「負ける顧客」を探している
「負ける顧客」 = 国内FX業者に利益をもたらしてくれる人
ですから、国内FX業者は常に「負ける顧客」を探しているのです。
しかし、「負ける顧客」は資金もすぐに底をついてしまいますし、ずっと負けていたら、FXトレードをするモチベーションもなくなってしまいます。
結局、「負ける顧客」はすぐにいなくなってしまうのです。
国内FX業者は口座開設キャンペーンを積極的に行って常に新しい「負ける顧客」を探しているのです。
「勝つ顧客」を重宝する海外FX業者とは考え方が根本的に異なるのです。
まとめ
国内FX業者は顧客が負けることが自社の儲けにつながるため、色々な形で「カバー取引」や「丸呑み」を実行しています。
スプレッドが海外FX業者と比較して狭いのは、ほぼフルカバーの国内FX業者と思った方が良いでしょう。
「負ける顧客」を重視して、「勝つ顧客」を重視しない国内FX業者とは長期的なパートナシップを築きにくいというのが実態なのです。