追証(おいしょう)とは、急な相場変動があった時に証拠金がFX業者の指定した一定の割合を割り込むと追加で証拠金を入れなければ強制的にロスカットされるという制度のことを言い、追加で証拠金を請求することを追証と言います。 国内FX業者は、この追証制度があるのですが、海外FX業者のほとんどは追証はゼロに設定しているのです。では、2015年1月に起きたスイスフランショックでの追証に対する国内FX業者と海外FX業者の対応を比較しました。
スイスフランショックとは
スイスの中央銀行「スイス国立銀行」が行ってきた無制限の為替介入を2015年1月15日に突如撤廃しました。1ユーロ=1.2スイスフランに設定していた対ユーロ上限を撤廃したのです。元々、為替介入がなければ、フラン高になることはわかりきっていたことで、結果として、一時1ユーロ=0.8517フランの過去最高値をつけ、ユーロ/スイス相場は一時41%の急落、1分足でも1600pips急落する事態が発生したのです。
出典:zai
追証(おいしょう)とは
追証とは
を言います。
FXトレードは、外国為替証拠金取引ですから、レバレッジを前提としたトレードになります。取引をするときに一定の証拠金(証拠金維持率)を維持することをFX業者を義務付けて、その証拠金維持率を割り込むと自動的に強制ロスカットされる仕組みになっています。
しかし、為替変動があまりにも急激に起こってしまうと、FX業者が強制ロスカットをしようとしても、「スイスフランショック」のように「買い手」や「売り手」がいない状態ですので、ロスカットしたくても、できないのです。
結果として、ロスカットが遅れてしまう分、投資家の口座残高がマイナスという状態になってしまうのです。
この状態は、追加で証拠金を差し入れないとFX業者が損をしてしまうため、
となるのです。
FX業者も、この状態を避けるために「ロスカットレベル(証拠金維持率)」の前に、「追証(追証を要求するアラート:マージンコール)」を設定するようにしています。
例:FXネオ取引
追証:100%を割り込んだとき
ロスカット:50%を割り込んだとき
出典:FXネオ
国内FX業者のスイスフランショックでの追証(おいしょう)の実態
国内FX業者の場合、どの業者でも「追証(おいしょう)」という制度を採用しています。
ザイFXの記事にあるFXブロガーの話
「トラリピのような取引をユーロ/スイスフランでやっていました。スイスショック直前の1月12日(月)にもSNBが1.20フランの防衛ライン維持を明言したばかりでしたし、強制ロスカットとなっても93万円ほどの資金が残るだろうと計算していました 計算上だと強制ロスカットとなるのは1.14フランあたり。ところが、実際にロスカットされたのは1.04348フラン。30万通貨ほど持っていたため、合計673万円の損失になりました。口座残高がゼロになるだけでなく、317万円の『借金』が残りました」
出典:ZAI FX
ロスカット未収金は33.8億円
金融先物取引業協会が公表した数字では、国内のFX取引業者でロスカット未収金が33億8800万円に及んだとのことです。
スイスフランショックのロスカット未収金
- 個人顧客:19億4800万円(1,137件)
- 法人顧客:14億4000万円(92件)
となっています。
個人顧客1人あたりの追証額 = 19億4800万円 / 1,137人 = 1,713,280円
ロスカット未収金というのは、国内FX業者が強制ロスカットで口座残高がマイナスになってしまった合計ですので、証拠金を多めに持っていてマイナス残高にはならなかったものの損失を出した個人投資家もかなりの数いることが推察されます。
マネックスグループでは、スイスフランの急騰に伴い、外国為替証拠金(FX)取引を手がける顧客が被った損失に対する未回収金が2015年1月16日時点で約1億6000万円になったと発表しています。 国内FX業者1社でも1億6000万円以上のマイナス残高の顧客が発生していることになるのです。
当然、この1億6000万円は「FX業者の債権」であり、「投資家の借金」ということを意味しているのです。
国内FX業者の追証は投資家にとっての大きなリスク
国内FX業者を使う場合には追証(おいしょう)によって、「証拠金以上に大きな損失(借金)を抱えるリスクがある」ことを理解しておく必要があるのです。
スイスフランショック以降の個人の追証発生額と追証発生件数
2015年1月:スイスフランショック
発生金額:1,949,647,000円
発生件数:1167件
2015年8月:中国人民元切り下げ
発生金額:829,113,000円
発生件数:4830件
2016年6月:ブレグジット(英国のEU脱退)
発生金額:193,553,000円
発生件数:2149件
2016年10月:米国大統領選挙選
発生金額:13,842,000円
発生件数:269件
2023年3月:新型コロナの拡大
発生金額:145,057,000円
発生件数:1617件
年月 | 発生件数 個人 |
発生件数 法人 |
発生件数 合計 |
発生金額 個人 |
発生金額 法人 |
---|---|---|---|---|---|
2011年 | 12416件 | 0件 | 12416件 | 1,729,086,000円 | 0円 |
2012年 | 0件 | 0件 | 0件 | 0円 | 0円 |
2013年 | 0件 | 0件 | 0件 | 0円 | 0円 |
2014年 | 2件 | 0件 | 2件 | 11,000円 | 0円 |
2015年 | 6786件 | 562件 | 7348件 | 2,907,457,000円 | 170,044,000円 |
2016年 | 4545件 | 372件 | 4917件 | 459,180,000円 | 64,775,000円 |
2017年 | 253件 | 31件 | 284件 | 25,991,000円 | 15,057,000円 |
2018年 | 1806件 | 16件 | 1822件 | 70,871,601円 | 438,000円 |
2019年 | 6391件 | 210件 | 6601件 | 809,179,000円 | 13,523,900円 |
2023年 | 1617件 | 38件 | 1655件 | 145,057,000円 | 4,490,000円 |
海外FX業者の対応は、どうだったのか?
海外FX業者も、「追証」を採用している業者は少なくありません。英国、米国、欧州などにある海外FX業者は「追証」を採用しています。
投資家に多くの「追証」が発生したけれども、投資家が借金を払い切れずに、海外FX業者が損失を被り、倒産してしまうケースもあるのです。
- 英国アルパリ(UK) Limitedは経営破綻
- 英国アルパリ(UK) Limitedは、追証」を採用しています。顧客が追証を入れることができず、損失をカバーできなかったことにより、その損失がアルパリ(UK) Limitedに引き継がれてしまい、1月16日(金)でアルパリ(UK) Limitedが破綻する事態になりました。
経営破綻はしなくても、大きな損失を海外FX業者
- IG index 3000万ポンド(約55億2000万円)
- 米FXCM 2億2500万ドル(約267億7500万円)
- サクソバンクグループ 1.07億米ドル(約127億3300万円)
英国アルパリ(UK) Limitedという海外FX業者の大手企業でも、倒産してしまう大きな事件だったのです。
当サイトで、紹介している海外FX業者の多くは「追証ゼロ」サービスを導入している海外FX業者です。
追証ゼロとは?
を言います。「追証なし」「追証ゼロ」「ゼロカットシステム」など色々な名称で言われることが多い「口座がマイナス口座になった場合には、その損失分はFX業者が被りますよ。」という制度です。
実際に「追証ゼロサービス」を採用している海外FX業者の対応
FxPro
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FxPro 重要なお知らせ – お客様とのお約束に何ら変更はございません。
弊社運用口座をご利用のお客様に対してマイナス残高の保護を提供させて頂いておりますが、今回のスイスフランを取り巻くマーケットにおいて発生しておりました、個人投資家における口座のマイナス残高表示は、全て手動にてゼロバランスへ調整作業を進めさせて頂きました。 現在、全ての作業が完了しておりますのでご確認をお願い致します。
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XMTrading(エックスエムトレーディング)
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重要なお知らせ: CHFに関する最新情報 大切なお客様、 スイス国立銀行がEUR/CHFの上限撤廃の決定したことよって引き起こされた最近の市場での非常に大きな値動きによって、XMはスイス国立銀行による大混乱の影響は受けての暴落の影響は受けていないことをお客様に保証致します。
XMは常にマイナス残高の自動的な保護を提供していることをお客様に再度ご案内申し上げます。 当社は、この度のEURCHF通貨ペアの異例な値動き等の混乱時には、特にお客様に対する当社の忠誠心の現れとして、こちらのマイナス残高の自動的な保護を継続していく所存です。 先週中にマイナス口座残高が発生した全てのお客様は、当社の評判と強みへのお約束を果たす為に、マイナス残高が起こりうる他のケース同様に、それらのマイナス残高は既にリセットされています。
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どちらの海外FX業者も、マイナス残高になった場合に口座はリセットされ、ゼロになるということを、実際のスイスフランショックの時も、示しているのです。
追証なしの海外FX業者はリスクを限定してFXが可能
その通りです。
しかし、信託保全を導入している海外FX業者、投資家保護基金などに加盟している海外FX業者であれば、海外FX業者でも一定額までの信託保全ができるので、倒産したとしても顧客資金は保全されます。(分別管理のみの海外FX業者の場合は倒産時に返還されない可能性があります。)
信託保全がある海外FX業者を選んでいれば、証拠金以上に損失を出す、借金をする、リスクがないのが海外FX業者のメリットなのです。
まとめ
追証があることで国内FX業者でトレードをしていると今回のスイスフランショックのようにわけもわからず数百万円単位の借金を背負ってしまうリスクがあるのです。 このリスクを回避したいのであれば追証がない海外FX業者をおすすめします。