新型コロナウィルスによって、世界中が混とんとしてきましたが、新型コロナウィルスによる為替相場への影響はどのくらいのものがあるのでしょうか?今度どうなっていくのかのシナリオも解説します。
新型コロナウィルス感染の現状分析・時系列
執筆時点:2023年3月7日
国外感染者数:94,310人
国外死亡者数:3,270人
国内感染者数:360人
国内死亡者数:6人
新型コロナウィルス感染の時系列ニュース
- 2019年12月31日:武漢で原因不明の肺炎
- 2023年1月7日:新型コロナウイルスと判明
- 2023年1月12日:中国で初の死者を確認
- 2023年1月13日:中国以外で初の感染確認
- 2023年1月16日:国内初の感染確認
- 2023年1月20日:ヒトからヒトへの感染が判明
- 2023年1月23日:武漢封鎖
- 2023年1月27日:中国人の団体ツアー旅行が禁止に
- 2023年1月28日:日本人の感染者を初確認
- 2023年1月29日 :武漢からのチャーター機第1便
- 2023年1月31日:WHOが緊急事態宣言
- 2023年2月1日:日本で「指定感染症」に
- 2023年2月5日:ダイヤモンド・プリンセス号で集団感染が判明
- 2023年2月8日:武漢在住の日本人が死亡
- 2023年2月11日:病名を「COVID-19」と命名
- 2023年2月13日:国内初の死者
- 2023年2月18日:厚生労働省大規模イベント自粛お願い
- 2023年2月19日:厚岩田健太郎教授 告発動画
- 2023年2月20日:ダイヤモンド・プリンセス号500人下船
- 2023年2月21日:日本への渡航禁止9カ国
- 2023年2月21日:国内感染者数100人突破
- 2023年2月21日:東京都は、都主催の大規模イベントを3/15まで原則延期、もしくは中止を発表
- 2023年2月22日:米、日本への渡航警戒レベルを2に引き上げ。継続的な市中感染が理由
- 2023年2月23日:韓、感染症の警戒レベルを『深刻』に引き上げ。4段階の最高レベル
- 2023年2月25日:政府『基本方針』を決定。新型コロナウィルス封じ込めに今後1~2週間が重要とし、イベントなど主催者には開催の必要性を改めて検討するよう求めた
- 2023年2月27日:3月2日から春休みまで、全国の小中学校・高校などに臨時休校を要請する
- 2023年2月28日:WHOは新型コロナウィルスの世界的なリスクを最高レベルの『非常に高い』に引き上げた
- 2023年2月29日:首相会見、臨時休校に理解求める。新たな緊急対策を10日ほどでまとめる考え
- 2023年3月3日:米国は、0.5%の緊急利下げを発表
- 2023年3月4日:東京都は花見シーズンを前に、都立公園で飲食を伴う宴会の自粛を要請
- 2023年3月7日:米国クルーズ船「グランド・プリンセス」で集団感染の疑いあり
各通貨の推移
米ドル/円
大きく円安ドルだけに動いている
出典:Yahoo!ファイナンス
各通貨の騰落率推移
円に対する各通貨の騰落率(3カ月前)
2月18日を契機に、円安が顕著に、その後円高基調へ
米ドルに対する各通貨の騰落率(3カ月前)
金利引き下げによってドル安が発生
過去のSARS流行時の為替推移
SARS流行時の米ドル/円
SARSば、中国で発生しましたが、日本ではそこまで拡散しませんでした。
- 2003年4月3日:SARSを感染症法の「新感染症」に指定
- 2003年4月7日:WHO指針に専門家の意見を加えた独自の管理指針を通達
- 2003年5月:台湾人医師が、帰国後SARSコロナウイルス陽性
- 2003年6月:指定感染症に指定
- 2003年11月5日:第一類感染症指定に指定
日本では管理指針に示された「疑い例(Suspected case)」・「可能性例(Probable case)」が複数発生したが、他疾患の診断が付くなどしていずれも後に否定された。
現状の考察
- 新型コロナウィルスによる円安が発生
- 米国の金利引き下げによってドル安が発生
という二重の要素により、2月18日から大きな円安のトレンドの後に円高が発生したということになります。
注目すべきなのは
- 有事の円買い(もし有事の円買いなら、2月18日の時点で円安は発生していない。)
ではなく、
- 米国の金利引き下げによるドル安による円高
ということです。
「日本円」と同じく、安全資産であり、リスクオフ相場で値上がりする「金」を見てみると
金価格の推移
出典:田中貴金属工業
「金」は上昇しているのです。
世界中の投資家が「リスクオフ」の時には、安全資産である「日本円」「金」を購入していたのですが、日本自体がパンデミックのホットスポットになってしまっているため、「日本円」を売り、「金」を買う動きに変化していることがわかります。
つまり、
「有事の円買い」のアノマリーが、日本自体がリスクオフの対象になってしまったため、薄れてしまった
ことになります。
リスクオン = 円売りの円安
リスクオフ = 円買いの円高
にはならなくなってしまった、「大きな転換点」になる可能性が高いのです。
これには
- 日本国内での死者の発生
- ダイヤモンド・プリンセス号で多数の感染者が発生
- ダイヤモンド・プリンセス号での管理の不手際が告発動画によって世界中に拡散されてしまった
- 日本国内では検査がされていないだけで、多数の隠れ感染者がいることが知れ渡っている
という状況を、市場はネガティブに受け取っていて、「リスクオフ時の円買い」に動かなかったということを意味しています。
しかし、状況は変わりつつあります。
日本以上に
韓国、イタリア、イランなど世界各地で感染者が増大している
という点です。
また、同時に
米国で「ダイヤモンド・プリンセス号」と同じように「グランド・プリンセス号」に感染者が出たまま、サンフランシスコ沖に停泊しているということです。
日本のような皆保険制度がない米国で、新型コロナウィルスが広がれば、感染者数は、より増大する可能性が高いのです。
「日本がホットスポットになり → 有事の円買いが敬遠された」状況から
「日本以外の米国、ユーロ圏内がより大きなホットスポットになり → 有事の円買いが戻ってくる」可能性が出てきているのです。
米ドル/円の予想シナリオ
新型コロナウィルスの自然消滅
新型コロナウィルスが自然消滅する可能性もあります。自然消滅してしまえば、「リスクオフ → リスクオン」になるため、円安になると予想されます。
ただし、自然消滅しただけでは、流行する潜在的なリスクを抱えることになるため、円安の進み方も、限定的なものとなるでしょう。
新型コロナウィルスに対する治療薬・治療法の確立
新型コロナウィルスに対する治療薬・治療法が確立された場合には、かなり新型コロナウィルスに対する脅威は収まることになります。「リスクオフ → リスクオン」になるため、現状の円安がさらに進むと予想されます。
新型コロナウィルスの進行が進み、世界中に拡散
現状、一番可能性が高いのがこのシナリオです。
とくに日本は、中国以上に人口密集都市があり、現時点でも、中国人の受け入れを停止していません。その上で、政府は、新型コロナウィルスに関する検査を制限しているため、実際の感染者数が表に現れずに、隠れ感染者が急増していることが予想されます。
しかし、日本人よりも、マスクをしない文化の欧米、日本のような皆保険制度がなく病院に行かない文化の欧米では、より感染が進む可能性があり、その場合、「有事の円買い」が再び評価されて、円高が進む可能性があります。
まとめ
つまり、現状の円安ドル高の状況が「リスクオフの円買い」が崩れたという認識が正しいのであれば
- 新型コロナウィルスの自然消滅
- 新型コロナウィルスに対する治療薬・治療法の確立
というシナリオで「円安」が進行することが予想されます。
- 新型コロナウィルスの進行が進み、世界中に拡散 → 日本の感染が終息し、外国の感染がより増加した場合
「リスクオフの円買い」が復活し、円高が進む可能性があります。
世界中の感染者数の状況に応じて、各国が利下げに踏み切ると、その国の経済情勢や、金利の状況に応じて、為替が乱高下することが予想されます。常に情報のアンテナを張っておくことが必要です。